テクノロジで迫る沈没船の謎(2)--北極海に眠る19世紀の探検船 - (page 4)

Jo Best (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-12-30 07:00

 パークス・カナダのチームは、エレバス号の船体外部とその場所の記録だけでなく、船内を移動しながら、発見した遺物の位置を記録するとともに、それらの間の分かりにくい関係を把握して記録するという難しい作業にも挑んだ。

 このためチームは実体写真測量という技術を使用した。Harris氏は「現在では、実体写真測量が極めて重要なツールとなっている。これは本質的に、大量のスチル写真をソフトウェアで処理する技術であり、次々と撮影された写真それぞれの間にある3次元的な関係を把握することで被写体の3次元モデルや点群を作成できるようにするというものだ。その結果、数時間もあれば、取得したすべてのデータから沈没地点の完全な3次元イメージを生成できる」と述べた。

 この調査では、海中油送管の損傷を検出するための水中用スキャナを製造するカナダの企業2G Roboticsの協力を得て、レーザースキャナも実験的に使用された。フランクリン探検隊の船を捜索するために同社が開発した、より到達距離の長いスキャナは、5m離れた物体をミリメートル単位の解像度で測定できるため、沈没船の外側を測定するために用いられた。チームは、船内を調査するために、20〜50cmの距離で使用できるより小型の装置も使用した。これにより、船内に置かれていた皿のような小さな遺物の位置も記録できた。

 チームはこの他にも、最新テクノロジを搭載した機材を用意していた。それは全長7.5mの自律型無人潜水機「Arctic Explorer」だ。この潜水機は、指示を出す側の人間とは異なり、72時間の連続水中活動が可能となっており、潜水機の位置や速度を記録するための慣性航法装置やドップラーログ(船速距離計)のほか、調査船が通常使用しているえい航式のサイドスキャン・ソナーよりもずっと広範囲(630m)を記録できる干渉合成開口ソナー(InSAS)システムといったさまざまなテクノロジを搭載している。

 Harris氏によると「このソナーは、レーダーからの多重情報を使用し、非常に精度の高い単一のイメージを合成するという合成開口レーダーと同じ仕組みを採用しているため、到達範囲内であれば親指の大きさ程度のものでも識別できる解像度を持っている」という。


エレバス号のソナー画像を指さすパークス・カナダのRyan Harris氏
提供:Theresa Nichols氏(カナダ水産海洋省)

 Arctic Explorerは、このような最新テクノロジを多数搭載していたが、現場に投入される機会はなかった。

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