アクセンチュア、オープンイノベーション推進組織を設立

山田竜司 (編集部)

2015-12-11 07:30

 アクセンチュアは12月10日、大企業とベンチャーの協業などにより自社の強みと自社では持つのが難しい他社の力を融合させて製品やサービスを生み出す「オープンイノベーション」を推進する組織として「アクセンチュア・オープン・イノベーション・イニシアチブ」の設立を発表した。

 アクセンチュアのグローバル・プログラムの一環であり、エンタープライズとスタートアップ、教育や研究機関、地域社会などさまざまなプレイヤーをつなぐ“橋渡し”を担い、課題の解決に必要な人やテクノロジ、アイデア、情報などが集約する組織を目指す。


チーフ・マーケティング・イノベーター 加治慶光氏

執行役員 デジタルコンサルティング本部 立花良範氏

 アクセンチュア・オープン・イノベーション・イニシアチブは3つのユニットからなる。大企業内で新規事業の立ち上げや、イノベーションに適した組織立ち上げ支援などを担う「カタリスト・ユニット」、スタートアップの拡大をテクノロジやアクセンチュアのサービスに組み込むことで支援する「サーチライト・ユニット」、社会課題を解決するエコシステム形成を目指す「ソーシャルシフト・ユニット」だ。

 カタリスト・ユニットでは、天才プログラマーやクリエーターを発掘・育成している一般社団法人未踏や、インキュベーション事業を展開するサムライインキュベートと連携し、クリエーターやスタートアップを、大企業へ紹介。新規事業の戦略策定や、事業計画策定、実証実験、新組織や新会社の立ち上げなどをサポートし、実際の売り上げをKPIにする。

 サーチライト・ユニットの取り組み例として、アクセンチュアがスポンサードしているベンチャー向けイベント「SLUSH ASIA」にて、スタートアップを同社の顧客に紹介、アクセンチュアのサービス提案の中に加えることで顧客へ提案していることなどを想定している。多くのとがったテクノロジを持つスタートアップとの連携を進める。

 ソーシャルシフト・ユニットの取り組み例では、先日発表した横浜市との協業や、横浜コミュニティデザイン・ラボとアクセンチュアのCSRチームなどが構築したウェブサイト「LOCAL GOOD YOKOHAMA」などを挙げ、社会課題の発掘と解決のための政策提言を目指す。

 アクセンチュアはこうした組織を立ち上げた背景として、組織の規模に関わらず、デジタル技術により市場に創造的な破壊をもたらすイノベーションを創出することが可能となった一方、企業にとって、自社の成長戦略の実現や、イノベーションの創出による競争優位の確立のため、最適なデジタル技術や協業先を見極めることが困難な状況であるためと説明した。

 2015年のG20のスタートアップ1020社、大企業1020社などへのオンライン調査によると、協業度合いが高い企業は、それ以外の企業と比べ、収益成長率が平均4ポイント以上高いという。デジタル領域で大企業スタートアップの協業により、日本でも940億米ドルの価値が出る可能性があるとし、オープンイノベーションの重要性を示した。

 チーフ・マーケティング・イノベーターを務める加治慶光氏は「(イノベーション論で高名な)Clayton Christensen氏が提唱する“効率化のためのイノベーション”は、先進国でのみ実現可能である一方、労働者の仕事を奪うために実現しにくいが、日本では就労可能人口の減少が急速に進むため、課題をクリアしており、イノベーションを起こしやすい」と説明。課題先進国としての優位性を生かすべきとした。

 組織を統括する一人である、執行役員 デジタルコンサルティング本部 立花良範氏はオープンイノベーションを推進する組織の強みとして「スタートアップや大企業、政府機関などをこれまで顧客として関係を作ってきたこと」「グローバルカンパニーとしての知見」「(自社で製品をもたないため)もっとも適した手段を採用できる点」「ソーシャルユニット分野が受け持つ、社会イノベーション事業にコミットしている点」などを挙げた。

 組織設立の所信表明として、「大企業のイノベーション支援」「起業文化の構築」「地域課題のイシューをデザインすること」を掲げ、 オープンイノベーションを推進する点を強調していた。


アクセンチュア・オープン・イノベーション・イニシアチブ

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