「オープンソースは選択肢ではなく、活用せざるを得ない」:レッドハットCEO

大河原克行

2015-11-05 08:00

 レッドハットは11月4日、東京・恵比寿のウェスティンホテル東京でイベント「Red Hat Forum 2015 Tokyo」を開催した。国内最大級のオープンソースソフトウェア(OSS)イベントと位置付け、今回は「Energize your enterprise-新たな可能性と時代を創る“力”が、ここに」をテーマにOSSがもたらす価値を訴求。3000人以上が来場した。

 Red Hatプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のJim Whitehurst氏の基調講演が行われたほか、ブレイクアウトセッションでは、クラウド、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)/ビッグデータ、DevOps、モバイル、モダナイゼーションの5つのカテゴリに分け、導入事例やデモを交えながら紹介された。

Dirk-Peter van Leeuwen氏
Red Hat アジア太平洋地域担当シニアバイスプレジデント Dirk-Peter van Leeuwen氏

 OSSによる次世代の仮想化技術やクラウド基盤によって、ユーザー企業のITインフラを刷新する提案、コンテナアーキテクチャやxPaaSを駆使したDevOpsによって実現するアジャイルなIT開発環境、さまざまなデバイスやチャネルで取得したビッグデータ/IoTをビジネスに迅速に活用することで「攻める経営に貢献するIT」の実現手法などを示してみせた。展示会場にはパートナー企業の最新技術や製品の展示などが行われた。

 日本法人の暫定社長を兼務する米本社アジア太平洋地域担当シニアバイスプレジデントのDirk-Peter van Leeuwen氏は、「今回のイベントでは、オープンソースを集約し、イノベーションとして企業の中にどう生かすことができるのか、ということを示したい」とした。

OSSは選択肢ではない

 午前9時30分から開催された基調講演では、Whitehurst氏が「THE FUTURE IS OPEN」をテーマに講演。また、OpenShiftとAtomic Enterpriseの製品部門バイスプレジデントでありゼネラルマネージャーのAshesh Badani氏が「Open Source is Programming the Digital Future」をテーマにそれぞれ講演した。

 Whitehurst氏は、「世界は変わっている」と前置きし、「企業が利益を出すには物理的な資産を通じてサービスを提供してきたが、今では情報こそが価値を持っている。UberやFacebook、Alibaba、Airbnbがその代表例であり、新規参入事業者が既存の産業を変革させている。Red Hatも知財(知的財産、IP)を持っていない中でビジネスを成長させている企業である」と同社の立ち位置を強調した。

Jim Whitehurst氏
Red Hat プレジデント兼CEO Jim Whitehurst氏

 さらに、「これまでのITは、コスト削減の手段であったが、今ではイノベーションを起こすためのツールになっている。そして、先進企業では、オープソースを活用したイノベーションを追求している。プロプラエタリの既存のソフトウェアではスピードが追いつかないからだ」と現況を解説した。

 「これは新規企業だけでなく、既存企業でも同様であり、次世代のビジネスモデルを起こしている。FordやGeneral Electric(GE)などの伝統的な業界トップ企業がオープンイノベーションを導入している。新たなイノベーションの中心は、オープンソースである。もはや、オープンソースは選択肢ではなく、これを活用せざるを得ない状況にある」とOSSを取り巻く状況の変化を強調した。

 「産業革命の歴史をみると、機械工具を作ったところではなく、それを活用した人たちが成功している。これからの勝ち組はベンダーではなく、ユーザー企業である。これからは、ビッグデータ、モバイル、クラウドを活用したユーザー主導のイノベーションが起こる。5年前に大手企業がオープンソースを利用していた理由は、安価であるという点だったり、ベンダーの囲い込みから逃れるための手段として用いられていたりしたが、今ではそれが大きく変わっている。もはやコスト効果は上位4つの理由の中にはない。それよりも、最高のものを手に入れるためには、オープンソースでなければいけないという意識に変わってきている」(Whitehurst氏)

 Whitehurst氏が示した調査結果によると、OSSを選択する理由として、スケーラビリティが58%、セキュリティが55%、競争力のある機能が43%、デプロイメントの容易さが43%となっていた。

 だが、その一方で次のようにも指摘した。

 「オープンソースのパワーは優れており、140万ものソースがある。だが、この中にどれを使うのか。これをエンタープライズで使うには心配だというものがある」

 そう指摘した後にWhitehurst氏は「ここにRed Hatの役割がある」と語った。Whitehurst氏は、Red Hatの特徴を示してみせる。

 「ひとつは、オープンソースコミュニティーのアップストリームで仕事をしている企業であるということ。オープンソースをサポートしているといっても、アップストリームに参加していない企業もある。最新の技術は、ここで開発され、活用されている。そこに参加していることは重要である」とする。そして、「アップストリームで開発されたものが、すべてのユーザーに当てはまるわけではない。さまざまなユーザー企業が活用できるようにするために、さまざまなユーザーと話をして、エンタープライズニーズを理解して、製品やサービスを提供することになる」と同社の優位性を解説した。

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