先日、Googleが、従業員の従業員の健康を支援することで従業員のエンゲージメント(愛着心)を高めることができる「健康経営」に取り組んでいることがうかがえる記事を目にしました。Googleでは、NASAのデータを参考にし、パフォーマンスを上げるために血糖値をKPIに置いているとか。また睡眠のリズムが整うよう、同じ時間に起きるなどの取り組みを進めているというのです。
また、日本経済新聞でも、インドのTata Groupなどが、健康と生産性との関連から肥満の管理といった健康経営を東南アジアで取り組んでいると紹介していました。
従業員の健康が、経営の観点からも重要視されているのは、世界的に先進国では人材が不足しているという問題が生じているからです。日本は少子高齢化、労働人口減少といった課題先進国が日本です。IT事業の場合、一人ひとりの能力がダイレクトに生産性に関わってきます。前回に続き、健康経営を推進しているIT企業を紹介します。
「従業員の健康を会社が支援するのは当然」--神戸デジタル・ラボ
神戸デジタル・ラボ 永吉一郎社長
システムインテグレーターである神戸デジタル・ラボ代表の永吉一郎社長は「当社は属人的な事業のため、人とその頭脳が事業の命。人材が何よりの経営資源だ」と言い切ります。
神戸デジタル・ラボの従業員の平均年齢は34歳。従業員の健康に関して問題が起こっているわけではありませんが、イキイキとした職場づくりのために従業員の健康管理に積極的です。その中心的な役割を担うのが、人事総務部長の竹内友彦さんです。
竹内さんは中途入社で神戸デジタル・ラボに入社し、7年目。前職も人事職だったそうですが、神戸デジタル・ラボでは、社長が従業員の健康管理の重要性をよく理解しているそうです。
――神戸デジタル・ラボでの健康経営に関しての取り組み事例を教えてください。
神戸デジタル・ラボでは社内のコミュニケーション促進活動を重視しています。月1回、2部門またがっての飲み会を奨励するなど、コミュニケーションの場づくりを積極的にサポートしているほか、社内の衛生委員会が中心になって、従業員が設立するスポーツクラブをサポートすることにしました。「みんなでスポーツ」、略して「みんスポ」と呼んでいます。
――「みんスポ」ではどんな活動をしているのですか。
フットサル、テニス、ボルダリング、卓球、バトミントン、ランニング、スノーボードなど、現在、10のクラブがあります。私はランニング部の部長をしています。ランニング部では、加入する部員とともに外部のリレーマラソン大会に出場し、達成感を得るなど、交流のきっかけになっています。
みんスポの運営には会社から1人あたり月額上限1000円の活動補助金が出ます。こういう後押しがあると従業員も取り組みやすそうです。
――「みんスポ」の効果は。
年に1回実施する「職場環境アンケート」では、約3分の2の従業員がこれらの施策を通じて従業員同士のコミュニケーションが促進されるようになったと回答しました。実際にスノーボート部で雪山に行ったメンバーが、そこで感じたことに基づいて新しいアプリを自主的に企画するなど、発想力を高める良い機会になっているようです。
採用での効果では、学生や応募者の方々に対してみんスポのことを説明すると、単に楽しそうというだけでなく、会社としてコミュニケーションを大事にしているという印象を持ってもらえるようです。「みんスポ」の利用率は重複して入っている人も多いのですが、延べ半数程度の人が加入しています。みんスポが浸透してきているのは、ルールはシンプル、目的も明確で、社員も利用しやすいことが挙げられます。
また、社員のワーク・ライフ・バランスをサポートする目的でテレワークも始めました。事業継続計画(BCP)への活用という狙いもありますが、現在5人の社員が利用しています。テレワークの導入には、周囲とのコミュニケーションや勤怠管理など、いくつか懸念事項はありましたが、まずはやってみようということになりました。