人やモノの状態を遠隔地からインターネットを介して認識したり、識別したりするIoT(モノのインターネット)の利用範囲が広がっている。日立製作所の情報・通信システム社でシニア・テクノロジー・エバンジェリスト兼社会イノベーション事業開発室長を務める安田誠氏は「いろんなデータを使って、新しい世界が生まれる」とし、電力など既存事業へのIoT活用による生産性向上や新しいビジネスの創出に取り組んでいる。
重要なのは何をしたいかのシーズに
日立が2月、通信機能を備えたモーションセンサなどを取り付けて、人の活動量から幸福感度(ハピネス度)を測るビジネスを始めた。集団の幸福感を身体運動の特徴パターンから「ハピネス度」として定量化するもので、例えば誰と誰が会話をしているのか、どちらが話をし、どちらが聞いているのか、といった人の行動から組織の活性度を測る。
安田氏によると、アウトバウンド型コールセンターに適用したところ、売れるチームと売れないチームの違いが見えてきたという。売れるチームは、休憩時間に活発に会話していたこと。
顧客の質問に、「こう答えた」「この質問には困ってしまった」などといった情報を共有しているということだろう。この仮説を他の業務に適用したところ、ハピネス度が業務や健康に好影響を与えたことが証明されたという。
安田氏は、IoTの可能性を次のように説明する。「インターネットが登場したとき、そんな危ないものを使えるのかと言われた。誰のものか分からない、OSS(オープンソースソフトウエア)を使えるかと言われた。だが、両者は目覚ましく普及した」。何をするのかといったシーズが重要ということだろう。
人とモノの動きをITでとらえるIoTは、ITの適用範囲を広げる。例えば、ある装置に取り付けたセンサーから収集したデータが、いき値を超えたらアラームが鳴る。事故や故障の発生を知らせるわけだが、一歩進めて事故や故障を未然に防ぐことに生かす。
人間の目には見えない正常の動作からわずかな異常を検知し、数時間後の故障を予兆する。そこに、ハピネス度のデータ、SNSのデータ、湿度などの環境データ、さまざまな装置のデータなどを組み合わせて解析すれば、見えてくる新しい世界があるはずだ。