2016年のインダストリー4.0:国内製造業に“ウーバライゼーション”の波がくる

谷川耕一 2016年01月01日 07時00分

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2015年は日本のインダストリー4.0元年だった

 2015年は、日本における「インダストリー4.0 元年」とでも呼ぶべき年だったかもしれない。2015年6月に発足した「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」など、官民学が一緒になった動きもようやく出てきたからだ。出遅れていると言われてきた日本の取り組みも、やっと重い腰を上げたのが2015年だった。

 そんな中、2015年前半の国内報道の多くは、ドイツや米国などで起きている新たな製造業の革新的な動きから日本は遅れてはならないと、危機感を煽るものがほとんどだった。こういった煽りも、今年の日本での大きな動きにつながったのかもしれない。とはいえ、活動の成果的なものはまだまだこれからというのが現実だ。


 動きが出てきたとは言え、現場の肌感覚では、黒船的に到来しているインダストリー4.0にそれほど危機感を抱いてはいないようだ。インダストリー4.0の話はたしかに今後の製造業のあり方を変え、新たな方向性を指し示すもの。しかし、現実はまだまだ「コンセプトが先行していて製造現場では実態が見えていない」と言うのだ。

 これは、もともと日本の製造現場ではファクトリーオートメーションを実施しており、コスト削減や生産の効率化、生産性向上のさまざまな取り組みをやり尽くしているからとの指摘もある。単に工場の効率化やコスト削減では物足りない。仮にサプライチェーンまで巻き込んだ広い範囲の最適化、効率化が実現できたとしても、それは「新たな産業革命」と呼ぶほどのものではないという認識もあるようだ。

どうやってつなげるかではなく、何をどうつなげるか

 おそらく日本の製造業が2016年以降に取り組むべき革命は、より範囲を広げて顧客とつながることだろう。そこまでできれば、ものを作って売るという伝統的な製造業のビジネスモデルから、価値を提供するサービス型へと大きく変革できる。


 これは、ファクトリーオートメーションから発展しているように見えるドイツ型のインダストリー4.0の中でも言及されていることであり、SAPなどが示す最新事例にも製造業のサービス化に関するものが出ている(とはいえ、製造業のサービス化は、米GEなどが主導して進めている“インダストリアルインターネット”の概念と捉えたほうが、一般的には理解しやすいかもしれない)。

 製造業のビジネスにおいて、人とのつながりが完成すればサービス化もおのずと見えてくるはずだ。しかしながらこの変革は、一足飛びには実現できそうにない。単に製造装置や製造した商品にセンサを入れてデータを集めるだけでは、それが実現できるわけではないからだ。センサやモバイル端末からデータを集め、それを知見に変える。知見を使って適切なアクションを適切なタイミングで起こさなければならない。これには製造業の製造部分を中心としたプロセスだけではなく、製造業という企業のビジネスプロセス全体を見直すことが必要になる。

 手に入れたい知見はリアルタイムに欲しいのか、あるいは1日後でいいのか、または1週間後でも大丈夫なのか。これらの要件は、実現したい新たなビジネスの要件によって異なってくる。IoTの形でインターネットにつなぐべきものもあれば、「Intranet of Things」で工場内や企業内、企業グループ内だけでつなぐことでも有効な知見は得られるかもしれない。後者のほうが、セキュリティリスクへの対応などは容易だろう。

 もちろんつなぐ部分の技術は標準化されているに越したことはないが、標準化されていなければつなげられないわけでもない。ドイツ中心で進められているインダストリー4.0の接続標準にしても、一般社団法人日本ロボット工業会が進めている「ORiN」のような標準化のアプローチでも、ラッパー的な技術で機器の違いなどを吸収するようなものが出てきている。なので、今後はつなぐことにそれほど神経を使ったり、手間がかかったりする時代ではなくなるだろう。

 つなぐ方法やネットワークをどうするかに悩むよりは、何をどうつなげるとどういう変化が起きるのか、そのビジネスシナリオが先に来なければならない。技術が先にありきではなくビジネス要件が先にありきだ。要件に対して、IoTやクラウド、ソーシャルネットワークやセンサ、モバイル端末といったテクノロジーをどう組み合わせるか、である。

 利用できる技術はいまや豊富に揃っている。新しいものもどんどん出てくる。じっくり考え設計してから動き出すよりも、どんどん新たな取り組みをしてトライ&エラーで進める必要がある。これは「Fail Fast」とも呼ぶべきアプローチであり、失敗を糧にして次のステップにいち早く進むことでもある。

製造業でも起こるUberization


 ところで、インダストリー4.0とは少しおもむきが異なるが、やはり欧米を中心に2015年に流行った言葉がある。それが「disrupt」「disrupter」といったものだ。これは日本語では「破壊者」などと訳されることが多い。代表的な存在は出版や書店流通の業界を破壊したAmazon.comであり、タクシー業界を破壊したUberだ。外から入ってきて、既存の業界のビジネスを壊すような動きに対して、新たに「ウーバライゼーション(Uberization)」などと言う言葉も生まれている。

 これからインダストリー4.0に取り組む企業は、製造業の中で勝ち組みになると考えるのではなく、自らが製造業の世界におけるdisrupterになることを目指すべきだろう。そのためには、製造業同士で寄り集まっていてもダメかもしれない。組むべき企業は金融業かもしれないし、全く新しいサービス業の企業かもしれない。破壊者によって市場が壊れていくことになんとか対処しようとするのか。あるいは自らが破壊者になって市場を変えていくのか。伝統的な産業である製造業においても、インダストリー4.0をきっかけにこれからはUberizationの波がやってくることになりそうだ。

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