横浜国立大学は、全事務職員約400人が利用する仮想デスクトップ環境を構築し、2015年10月に稼働を開始した。セキュリティの強化と運用負荷の低減を目指している。構築を手掛けたネットワンシステムズが1月8日に発表した。
横浜国大はこれまで、ネットブート方式(端末の起動時にOSとアプリケーションをサーバからダウンロードして端末側で実行する方式)のシンクライアント環境で業務を進めていた。
今回、このシステムのリース切れを機に、サーバの利用効率の向上、セキュリティのさらなる強化、そしてクライアント運用負荷の低減のため、シンクライアントシステムの方式を変更し、シンクライアント専用端末のみで利用可能な仮想デスクトップ方式を採用した。
今回の仮想デスクトップシステムに採用されたネットワンの提案では、同社が豊富な導入実績とノウハウを持つVMware、Cisco Systems、EMCの各製品を中心とした内容となっている。主な導入製品は以下の通り。
- 仮想デスクトップソフト:VMware Horizon View
- 仮想化ソフト:VMware vSphere
- サーバ:Cisco UCS Bシリーズ ブレードサーバ
- 共有ストレージ:EMC VNX
- セキュリティ対策ソフト:Trend Micro Deep Security
ネットワンでは、自社の仮想デスクトップ環境の運用経験も交えて、レスポンスタイムを高めつつコストも最適化する設計、構成として、職員のデスクトップ環境の利用状況、リソースの消費状況を事前に評価。そのデータをもとに、仮想デスクトップの性能や体感速度などにおいて根拠を持った設計、構成で提案したとしている。
また、ネットブート方式から仮想デスクトップ方式への変更におけるシステム管理環境の変化について、同社のデモ施設「ソリューションブリーフィングセンター」で事前に体感することで、安心して環境を移行できるよう工夫した。
仮想デスクトップの作成方法には、リンククローン(マスターイメージを用意し、そのクローンを複数の利用者に展開する方法)を採用して運用負荷を低減し、必要なストレージリソースを削減することでコストも抑制した。
セキュリティ対策ソフトに「Trend Micro Deep Security」を採用することで、ウイルス対策ソフトのパターンファイル更新がサーバ側で実施されるようになり、従来は毎日必要だった端末への更新作業がなくなるとともに、ウイルス検索時のシステムへの過負荷発生も回避している。

横浜国大が構築した仮想デスクトップ環境(ネットワンシステムズ提供)
横浜国大は、職員が取り扱う業務データを共有ストレージで集中管理することによってセキュリティ強化を図っている。運用面では、マスターイメージ作成の負荷、故障交換の負荷を軽減し、管理画面の操作性を向上するほか、ウイルス対策ソフトのパターンファイル更新作業が不要になるなど運用負荷が低減した。
さらに、端末の起動速度が向上し、利用者の利便性も改善している。垂直統合型システム「EMC VSPEX」を採用することで初期投資コストと運用コストを削減した。
将来は、今回導入した仮想デスクトップ環境を活用することで、災害などの際に自宅や遠隔地から業務を継続できる環境を整備することも検討している。
横浜国立大学 図書館・情報部情報企画課長の仁村俊明氏は、次のようにコメントしている。
「今回導入した仮想デスクトップによって、情報セキュリティ強化と運用コスト削減を図ることができました。ネットブート方式と比べて起動スピードも向上し、職員の利便性にも寄与していると考えています。今回のシステム導入にあたっては、ネットワンシステムズが豊富な実績に基づき最も現実的な設計をされており、課題が発生してもスピーディーに解決する姿を見ることで、最後まで安心してプロジェクトを任せることができました」