ブロケードコミュニケーションズシステムズは1月21日、モバイルネットワーク市場への参入を発表した。移動体通信事業者(Mobile Network Operator:MNO)とMNOの通信回線を借りて通信サービスを提供する仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator:MVNO)に向けた取り組みを推進し、ネットワーク仮想化関連製品の提供を強化していく。
転換期を向かえているモバイル市場
ブロケード 代表取締役社長 青葉雅和氏
同社代表取締役社長の青葉雅和氏は、「これまで当社は、SAN(Storage Area Network)やイーサネットファブリックをデータセンターやクラウドの事業者に向けて提供してきた。政府による携帯料金の引き下げ推進、拡大するMVNO市場、クラウド事業者によるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)サービスの充実などからモバイル市場では、これまで以上に柔軟で迅速なネットワークソリューションが求められている」と日本市場での参入の背景を説明した。
企業がすでにクラウドに持っているデータをエンドユーザーの末端にまで提供しようとする時、同社の提供する製品や技術は、モバイル事業者が実現したいデータサービスやモバイルサービスを強力にサポートできると語った。
第3のプラットフォーム対応のモバイルネットワーク
米本社の最高技術責任者(CTO)であり、コーポレートデベロップメントとエマージングビジネスを担当するシニアバイスプレジデントのKen Cheng氏が、同社の戦略について、3つの領域でビジネス戦略を推進すると説明した。
まずはコアビジネスとなる、ネットワークファブリックとルーティング分野である。ファイバチャネル(FC)SANでマーケットリーダーであるとともに、イーサネットやIPファブリックでは大企業などに向けて大規模導入を推進してきたと語った。
次に成長分野である、ソフトウェアでネットワーク機器を制御する“Software-Defined Networking(SDN)”と通信事業者が運用する、専用のネットワーク機器の機能を仮想化して汎用のx86サーバなどで稼働させることを目指す“ネットワーク機能仮想化(Network Functions Virtualization:NFV)”関連の製品群がある。
同社は、オープンソースで開発が進むSDNコントローラ「OpenDaylight」にコミットしながら、標準APIとデータモデルの策定を推進するなど、SDN/NFV分野でマーケットリーダーとなってきたとCheng氏は解説した。
そして最後に、新しいビジネス分野として、ビッグデータ分析やセキュリティ、モバイルがあることを示した。Brocadeは2014年9月にモバイル領域でアナリティクスソリューションを提供するVistapointeを買収、2015年3月には、モバイルでのコア網を仮想化する“virtual Evolved Packet Core(vEPC)”技術を提供するConnectemを買収した。
このような新しいビジネス分野は、クラウドやモバイル、ソーシャル、ビッグデータ(アナリティクス)という、これまではなかった技術からなる“第3のプラットフォーム”で重要な構成要素になるものだ。ブロケードでは、大規模なテレメトリデータを収集、処理するビッグデータ分析に注力するとともにビッグデータ分析と機械学習をベースとして次世代セキュリティ技術を実現するという。
新しい課題を抱えるモバイルサービスプロバイダー
米本社のディスティングイッシュトエンジニアでありモバイルネットワーキング担当CTOのKevin Shatzkamer氏が、モバイルネットワーク市場に対する戦略の詳細を説明した。
TechRepublic Japan関連記事:SDN座談会
(1)運用管理のあり方を変えるSDNは適材適所で考えるべき
(2)ソフトのスピード感でネットワークを制御する利点を生かす
(3)インフラ自動化を支えるSDN--気になるコンテナとの関係
(4)ネットワークからアプリケーションを理解することの重要性
モバイル市場は、2020年までに世界人口の90%が携帯電話を保有し、260億台ものデバイスが接続されるようになると言われている。また、MVNOビジネスが急速に拡大するとともにネットワークに接続されるモノの数も膨大な数になっていくという。そのために、MNOとMVNOというモバイルサービスプロバイダーは、収益の確保とネットワークの面で新たな課題を抱えているとShatzkamer氏は解説した。
たとえば、IoTによる膨大で非常に微小なパケットや動画、第4世代のモバイル通信規格である「LTE」で音声をパケットにしてやり取りする「VoLTE」など多様なパケットが混じりあう“トラフィックミックス”は、現行の設備投資と馴染まないといったことが考えられる。
そのために、モバイル通信規格の第5世代(5G)の登場は、高速化やレイテンシの低下などにとどまらず、新たなデジタル環境に対応したものに進化させることで、新しいビジネスモデルと収益を創出するための柔軟なテクノロジインフラになるとShatzkamer氏は語った。