こんにちは、佐藤直生です。今回から始まるこの連載では、先週の1週間に発表されたMicrosoft Azureの新機能から、筆者の独断と偏見で選んだトピックについて紹介していきます。
SQL Server 2016 Developerイメージ
SQL Serverの最新バージョン「SQL Server 2016」が6月1日にGA(一般提供)になりました(関連記事)。SQL Server 2016では、インメモリ処理のパフォーマンス向上、R言語の統合などの高度な分析機能、データベース テーブルを透過的にオンプレミスからAzureに拡張するStretch Database機能など、興味深い新機能が多数提供されています。
また、3月には、SQL Serverの新しいエディションである「Developer」を発表していました。これは、開発/テスト目的に限定して、最上位エディションであるSQL Server Enterpriseの全機能を無料で利用できるようにするものです。「Visual Studio Dev Essentials」プログラムに無料登録することで、SQL Server 2016 Developer、SQL Server 2014 Developerをダウンロードできます。Visual Studio Dev Essentialsには、毎月3000円分のAzure無料枠など、他にも数多くの特典があるので、是非登録してみてください。
さて、今回発表されたのは、SQL Server 2016 Developerがインストール済みのAzure VM(仮想マシン)イメージが新たに公開されたということです。Azure Marketplaceや、Azureポータルで、SQL Server 2016 DeveloperのVMイメージから簡単にVMを新規作成できるようになりました。これによって、SQL Server Developerのダウンロードやインストールをすることなく、簡単にSQL Serverの開発環境を構築できます。

SQL Server 2016 Developerイメージ
なお、AzureはSQL Serverの運用環境(本番環境)向けVMイメージも公開しており、時間単位でのSQL Serverライセンスやオンプレミスからのライセンス持ち込みが可能です(関連情報)。
Azure BackupによるPremium Storage VMのバックアップ
Azureでは、1つのVMは、1つの(OSがインストールされる)OSディスクと、0個以上の(任意のデータ格納のために使える)データディスクを持ちます。OSディスクやデータディスクの実体は、Azure Storage上のVHDファイルです。以前から提供されていたStandard Storageでは、1ディスクあたり最大500 IOPSというIO性能でした。VMに最大40個のデータディスクを接続したとしても最大20000 IOPSまでしか達成できないため、データベースなど、IO性能への要求が高いワークロードにとっては不十分なものでした(なお、接続可能な最大データディスク数は、VMサイズによって異なります)。
2015年4月にGAとなった新しいPremium Storageは、より高いスループットと低いレイテンシを実現するSSDベースのストレージです。Premium Storageを使うことで、VMあたり最大64Tバイトのストレージ、最大80000 IOPS、 最大2000Mバイト/秒のディスクスループットを達成できます(なお、これらの最大値は、VMサイズによって異なります)。Premium Storageを使うには、「S」が含まれるVMサイズ(DS、DSv2、FS、GS)を選択し、要件に合わせて一連のPremium StorageやStandard Storageを組み合わせて構成します。
Azure Backup は、オンプレミスやAzureにあるデータのバックアップ/復元のためのサービスです。クラウドサービスのためオンプレミスにバックアップのためのストレージやテープを持つ必要がなくなりますし、世代管理や増分バックアップといった機能もサポートされています。Azure Backupでは、次のものをバックアップできます。
- WindowsクライアントおよびWindows Serverのファイル/フォルダ
- Hyper-V VM(Windows/Linux)
- SQL Server/SharePoint/Exchange
- Azure VM(Windows/Linux)
Azure Backupを使うと、Azure上のWindowsやLinuxのVMを停止することなく、一貫性のあるVMディスクのバックアップを自動的に取得することができます。
さて、5月には、ARM(Azure Resource Manager)ベースのVMのバックアップがサポートされました(ARMは、「クラシック」なASM(Azure Service Management)の後継にあたる、Azureの新しいデプロイ/管理モデルです。関連情報)。合わせて、Premium Storage VMのパブリックプレビューも始まっていました。
そして、今回発表されたのは、Azure BackupのPremium Storage VMサポートの一般提供です。パブリックプレビューから1カ月も経たないうちにGAになるとは、動きが速いですね。これによって、Azure Backupで、Premium Storageを使っているVMのバックアップを取得できるようになります。ARM、ASM両方のモデルがサポートされています。復元の際には、同じIO性能を持たせるためにPremium Storageの構成に復元することも、より安価なStandard Storageの構成に復元することもできます。
5月のARMのサポート、今回のPremium Storageのサポートによって、AzureでのVMのバックアップはAzure Backupですべてカバーできるようになりました。

Azure Backup
回復性 技術ガイダンス
Azureの回復性 技術ガイダンスドキュメントのアップデートが公開されました。これは、以前、MSDNライブラリで公開していた「ビジネス継続性 技術ガイダンス」の後継にあたり、現在のAzureサービスでの選択肢やさまざまな障害から復旧するための考え方を紹介しています。さまざまな障害の種類、ビジネス継続性のシナリオ、DR(災害復旧)計画の設計方法を扱っています。
- ローカル障害からの復旧:特定のシステム/ハードウェア内の障害に対するHA(高可用性)
- Azureリージョン全体にわたるサービスの停止からの復旧:オンプレミスのアプリケーションのDRサイトとしてのAzure
- データの破損または偶発的な削除からの復旧:データベースやテーブルの削除のようなオペレーションミスやデータ破損/エラーへの対処
信頼性の高いアプリケーションのアーキテクチャを検討する上で、回復性、HA、DR、ビジネス継続性は非常に重要なトピックです。これらのドキュメントで、Azureサービスにおけるこれのトピックの基本を把握してください。
それではまた来週。
- 佐藤直生 (さとうなおき)
- 1999年から、OracleでJava、アプリケーションサーバ、開発ツールなどのエンジニア/テクニカル エバンジェリストを担当後、2010年9月にMicrosoftに入社。Microsoft Azureの黎明期からエバンジェリスト/テクノロジストとしてAzureを担当。オライリーなどの技術書の監訳、翻訳も多数。 ブログ: https://satonaoki.wordpress.com/ Twitter: https://twitter.com/satonaoki