Azure IoT歩行補助車で高齢者の健康増進:富山大研究チームにMSが参画

羽野三千世 (編集部) 2016年06月27日 12時35分

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IoTまちなかカートを使う富山市 市長の森雅志氏、日本マイクロソフト 執行役最高技術責任者 榊原彰氏(右)

 日本マイクロソフト、富山大学、富山市、富山県高岡市でアルミ製の建築資材などの製造を手掛ける三協立山の4者は6月26日、富山市においてIoTを活用した高齢者の健康増進のための取り組み「富山発・高齢者向け ホコケンIoTプロジェクト」を開始した。

 今回の取り組みは、富山大学歩行圏コミュニティ研究会(通称:ホコケン)が2009年から、三協立山、富山市、富山市民と協働で実施してきた「歩いて暮らしたくなるまち(歩行圏コミュニティ)づくり」の研究プロジェクトに、日本マイクロソフトが新たに参画する形で実施するもの。研究プロジェクトで開発した高齢者向けの歩行補助車「まちなかカート」のタイヤに回転センサを取り付け、通信モジュール搭載デバイス、Microsoft Azureと組み合わせて、カートの移動距離、移動時間、移動速度といったデータをAzure上に吸い上げて分析、Power BIで可視化する。

 同日、IoTプロジェクトの開始に合わせて富山市内で開催されたイベントでは、通信モジュール搭載デバイスとして「Surface 3」を使用。Surfaceをカートの上部に取り付けて、地域高齢者とプロジェクトメンバーが一緒にまち歩きをした。

 このシステムでは、Surfaceで回転センサからの情報をBluetooth通信で取得し、市内に整備されているWi-Fiを使ってAzureへデータを送信。Azure上で集計したデータを研究メンバー向けにPower BIで可視化する。また、回転センサから取得したデータはリアルタイムにSurface上に表示されるので、カートの利用者が自分の歩行距離、歩行速度などを確認しながら街歩きを楽しむことができる。

 さらに、市内の店舗にビーコンを設置し、カートが近づくと店舗情報をSurface上に表示することも行っている。「単なる店舗情報だけでなく、店舗オーナーの手書きメッセージの写真を表示する。温かみがあり、私がこのプロジェクトで一番好きなポイントだ」と日本マイクロソフト 執行役最高技術責任者 榊原彰氏。店舗オーナーからの写真は、店舗のアカウントでInstagramにアップした最新の写真をAzureで取得し、ビーコンでSurfaceに配信する仕組みだ。


Microsoft Azureで歩行データを集計してPower BIで可視化。こちらは研究チーム向けの画面だ

店舗に設置したビーコンからSurfaceに情報を配信。こちらはユーザー向けの画面だ

SurfaceのかわりにRaspberry Piを使うシステムも用意

 富山市は、中央市街地を活性化して都市機能の郊外への発散を抑制する「コンパクトシティ」を推進している自治体だ。中央市街地において、公共交通の拡充や、レンタル自転車の整備、市民が積極的に市中央部に足を向けるための施策を実施している。ホコケンは、このコンパクトシティ化を進める富山市の中心部をフィールドにして、少し足腰が弱くなった高齢者も積極的に街を歩いて健康を維持してもらおうという研究プロジェクト。まちなかカートを活用した社会実験を行ってきた。

 「一般的に、“健康寿命”と言われるものの全国平均は男性で70歳とされる。健康寿命を伸ばすために大事なのは、自分の足で歩くことにつきる」と富山大学 学長 遠藤俊郎氏が言うように、高齢者にとっての歩行は地域の要介護率の改善に役立つ。特に、ホコケンの研究プロジェクトで開発したまちなかカートは、女性よりも健康寿命が短い傾向がある男性高齢者にとって、積極的に使いたくなるデザインになるようにこだわったという。


Raspberry Piを使ったIoTの仕組みも用意した

 今回、日本マイクロソフトがホコケンの研究プロジェクトに参画し、まちなかカートにIoTの機能を実装した。富山市 市長の森雅志氏は、このIoTまちなかカートは、市内にステーションを設けて、公共のものとして市民に貸し出していく計画だと説明。「取得したデータについては、個人を特定することはせず、市民全体としてどのくらい歩行したのかを分析するのに役立てる」(森氏)とした。さらに今後は、IoTまちなかカートを使った健康増進策を全国に展開していきたい考えだ。


自転車の走行距離などを取得する小型コンピュータで回転センサの情報を収集

 公共用途での利用と、他地域への展開のしやすさを考慮して、日本マイクロソフトでは、Surfaceではなく、自転車の走行距離などを取得する小型コンピュータとRaspberry Piを使ったシステムも用意した。

 こちらのシステムでは、自転車用小型コンピュータをまちなかカートに取り付け、回転センサの情報をBluetoothで取得して蓄積する。カートを貸し出すステーションにBluetoothとWi-Fiの通信モジュールを搭載したRaspberry Piを設置しておき、カートが返却された際に小型コンピュータとRaspberry PiでBluetooth通信してデータを吸い出し、さらにWi-Fi経由でAzureにデータを送信する。「より安価にIoTの仕組みが実現できるので、ほかの自治体への展開がしやすくなる」(榊原氏)

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