英国では先週、世界最大級のテクノロジ企業を率いる複数の経営者が、欧州連合(EU)からの離脱は同国のテクノロジ産業を弱体化させ、この産業の企業や顧客は「長期にわたって著しい先行き不安にさらされ、英国から脱出するだろう」と警告した。
その警告は正しかったと証明されるのも、遠い未来のことではなさそうだ。
もともと、EU離脱を望むテクノロジ業界の経営者は少なかった。英国のテクノロジ企業経営者を対象として3月に実施された調査では、70%がEU残留を支持し、EU離脱が正しいと考えていたのは15%に過ぎなかった。
EU残留を支持していた回答者の4人に3人は、EUに加盟していることによって英国への国際投資の魅力が増し、自社が貿易関係を結ぶ際の条件が有利になったと回答している。
英国のテクノロジ業界は、欧州における拠点を英国に置く多国籍企業や、何十万人もの労働者、スタートアップなど、さまざまな要素から構成されている。そして、それぞれ優先するものが異なる。
テクノロジ業界の一部が、EU離脱からプラスの影響を受ける可能性もあることはある。企業がEUから雇用する労働者が減り、英国企業は優良な労働者の雇用維持やトレーニングに真剣に取り組むようになるかもしれないし、給与が上がる可能性さえあるかもしれない。
また、ポンド安は輸出に有利に働くかもしれず、EUへの所属(およびEUによる規制)による確実性が失われることで起こる興奮状態は、英国に新たな巨大ベンチャー企業が生まれるきっかけになるかもしれない。
しかし、実際にどうなるかは今後の交渉次第とはいえ、現在明らかになっているのはどちらかといえば否定的な面が多い。
多くの企業経営者は、短期的には多くの先行き不安が生じる可能性が高いと心配しており、少なくともEU離脱の条件が明確になるまでは投資が減少する可能性があると考えている。
もしポンド安の状態が続けば、長期的なハードウェアやソフトウェアの輸入費用は上昇し、企業のIT投資はさらに引き締められる可能性がある。欧州からの輸入(および輸出)も、より困難になり、コストが上昇するかもしれない。また大企業は欧州の他の顧客に近い地域に拠点を移したいと考えるかもしれない。
しかしこれらは、人材の問題に比べれば些細なことだ。英国のテクノロジ産業が成功を収めるには、あらゆる国々(特にEU)の才能ある人材が重要であり、最も大きな脅威となるのは、この問題だろう。例えば、ARMの本社には、英国以外のEU諸国出身のチップ設計者が200人おり、同社は今後の離脱条件交渉について、特にビザに関して注目していくと述べている。
もし最終的な離脱条件が、欧州の人々の英国内での居住や就労、就学、企業の設立などを制限するものであれば(離脱を求める運動は、そのように理解されている)、テクノロジ産業に対する大きな打撃となる。