ウィンブルドンを盛り上げるIT活用の匙加減--公衆WiFi無し、データ収集は人の手で

Steve Ranger (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-07-02 06:00

 2016年のウィンブルドンテニス選手権では、世界中のファンと繋がるために最先端の技術が使われているが、主催者はこれらの技術がテニスのプレーから注意を逸らしてしまう結果にならないように、注意を払っている。

 この大会を運営するオール・イングランド・ローン・テニス・クラブ(AELTC)は、IBMと長期契約を結んでおり、同社は毎年この大会で新たなテクノロジをお披露目している

 例えば今回はウィンブルドン選手権のための「Apple TV」用アプリが新たに導入された。このアプリを使うと、ユーザーはリアルタイムでスコアをチェックしたり、ウィンブルドン大会のテレビ番組を見たり、生放送のラジオ番組を聴いたり、動画や写真を閲覧したりすることができる。また、「iOS」と「Android」用の応答性の高い「The Championships, Wimbledon」アプリでは、自宅で観戦するファンに個人に合わせた情報を提供するほか、ウィンブルドンで観戦する予定のユーザーに対して、事前に観戦の計画を立てるためのオプションが新たに提供されている。

 ウィンブルドンではまた、IBMのコグニティブコンピューティングサービス「Watson」を利用して、ウィンブルドンと同時に開催されるほかのスポーツイベント(クリケット、自動車レース、欧州のサッカー選手権など)に関するTwitter、Facebook、Instagramなどのソーシャルメディアのトラフィックを分析し、ソーシャルメディアチームが関連する記事や画像を宣伝するチャンスを見つけようとしている。

 ウィンブルドンのウェブインフラも、大会が開催される数週間のために規模を拡大させる必要がある。2016年のウェブサイトはこれまでで初めて、4カ所(米サンノゼ、加トロント、英ロンドン、豪メルボルン)で運用されているIBMのハイブリッドクラウドと、2カ所のプライベートクラウドデータセンターでホストされている。

 IBMのウィンブルドンプログラム担当役員であるSam Seddon氏は、「Novak Djokovic選手がセンターコートに入場する時にトラフィック量が急増することは分かっており、これに対応できるサービスを提供する必要がある。しかし、次の急増がいつ起こるかは分からず、こういう局面でクラウドの特長が役に立つ」と語る。

 セキュリティも問題の1つだ。IBMによれば、2014年から2015年までの間にサイバーセキュリティ攻撃は500%増加しており、Seddon氏は、2016年は「セキュリティ事象」がすでに1500%増加したと言う。

 これらのイノベーションの多くは、コートサイドで収集された試合データに支えられている。こうしたデータはシステムに取り込まれ、そのシステムを使って解説者にリアルタイムの情報が提供され、試合に関する分析、統計、背景情報などが収集され、アプリに対するサービスが提供されている。しかしこれらのデータを記録しているのは、コンピュータを使ったシステムではなく、人間の専門家だ。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]