世の中のあらゆるモノ、コト、状態をIP(インターネットプロトコル)につなぐことでさまざまなデータを収集(センシング)し、そしてそのデータを業務効率化や日常における快適性向上のための情報として活用するIoT(Internet of Things)は、これからグローバルで数百億、数千億とも言われる巨大市場を生み出そうとしている。
既に日本国内でも多くのシステムベンダー、システムインテグレーターがIoT分野で大きなビジネスを生み出しているが、市場を俯瞰してみるとIoT分野の競争は日本国内だけでなく世界中の企業がかかわる大規模なものとなっている。
そこで日本企業が生き残り、市場をさらに拡大させるためには、日本のシステムベンダーやシステムインテグレーターは市場を健全に発展させるための知見と、グローバル規模の競争で勝つための体力を身につける必要があり、そのためには今から考えるべき課題があるのだ。
これまでわたしは、ぷらっとホーム株式会社のIoTビジネス開発部部長として、当社が開発したマイクロサーバ「OpenBlocks」シリーズの提供を通じ、数多くのシステムベンダーやシステムインテグレーターとともにIoT分野におけるシステム開発に携わるとともに、日本市場におけるIoT分野の成長をリードすべく国内外のさまざまな業界動向をキャッチアップしてきた。
今回は、そうした経験から得られた知見を元に、IoTの最新トレンドを紹介しながら、日本におけるIoT市場の健全な成長のためにシステムベンダーやシステムインテグレーターが考えるべきいくつかの課題について提言したい。
明確化し専門性を増すIoTの導入目的にどのように対応していくか
1つめのトレンドは、IoTに対する企業ニーズの変化だ。企業にとって、IoTはもはや興味関心のフェーズから本格的に活用するフェーズへと移行しており、その狙いは業務の変革、生産性の向上、新たなビジネスの模索といった企業の事業そのものに大きな影響を与える分野へと向けられつつある。
それゆえ、IoTを導入するためには、クライアント企業のさまざまな部門と横断的に交渉・調整していく必要があり、それぞれの専門知識が求められるようになる。1社ですべての領域のノウハウをカバーすることができない場合もあり、特定の領域に専門的な知識を持つ複数のシステムベンダーやシステムインテグレーターがパートナーエコシステムを組んでインテグレーションすることが求められるだろう。
この「パートナーエコシステム」という言葉は、日本におけるIoT市場の成長の鍵を握る重要なキーワードだ。
IoTをめぐるグローバル市場の成長は加速の一途を辿っており、競争は激化している。デバイスは規格の統一が進み、ワンマーケット化が進行。IoTをめぐるさまざまな技術仕様やアーキテクチャも急速に変化している。そうした中で、ベンダー企業は企画・開発・市場投入のサイクルを短縮させ、効率よくクライアント企業のニーズに応えようとしている。こうしたスピードについていくために求められるのは自社の強みを他社の強みと融合して競争力を生み出すパートナーエコシステムであり、市場を勝ち抜くためのスピードと効率を分業によって手に入れる必要があるのだ。
こうしたパートナーエコシステムが効果を発揮するのが、システムの実装段階だ。IoTはすべての業種がクライアントになりうる市場であり、非ITビジネスのIT化に大きなオポチュニティが存在している。
しかしながら、システムベンダーやシステムインテグレーターのクライアントとなる企業は、業種によって常識もノウハウもコミュニケーションの方法も大きく異なり、必ずしもシステムベンダーやシステムインテグレーターの得意なところでビジネスができるとは限らない。
こうした差異を埋めるためにも、さまざまなノウハウを持った企業がパートナーエコシステムを構築してクライアントニーズに応えることが重要となるだろう。