技術のオープン化とパートナーエコシステムが日本の競争力を生み出す
最後にまとめとして、日本のIoTがグローバル市場での競争に勝つためのポイントをまとめたい。
1つは、これまで述べた通りパートナーエコシステムによるシステムの共創だ。さまざまな業種の企業がクライアントとなるIoT市場において、クライアントのビジネス環境からシステムのトレンドまでを網羅的に理解してクライアントと相対することができる“ジェネラリスト”は存在しない。
こうした中で多様化するクライアントニーズに応えてIoT市場を拡大させるためには、1社ですべてを解決しようとせずにパートナーエコシステムによる分業体制を構築することで、コストの過大化やスピードの鈍化を防ぐことができるのだ。
加えて重要なのが、システムのオープン化/オープン技術の活用によるシステム構築の必要性だ。これまでのICTのさまざまな技術・製品の歴史を振り返ると、成長が期待できる分野ではシェアをリードしようと企業からさまざまな独自仕様、独自アーキテクチャが登場し、結果的にこうした複数の独自仕様がシェア争いを繰り広げることで市場がガラパゴス化するという状態が生まれてきた。
市場のガラパゴス化は最終的に競争を鈍化させ、限られたプレーヤーだけでシェアを奪い合う焼き畑農法的ビジネス展開は、市場に閉塞と衰退を生み出す。そこに海外のグローバル企業からオープン技術による画期的な製品が投入されて市場を席巻すると、日本企業はそのイノベーションに太刀打ちすることができないのだ。
IoTの現在地は、技術を提供するシステムベンダーやシステムインテグレーターと、その技術を活用したいと考えるクライアント企業の間に大きなリテラシーの差異が生まれている状態で、この差異こそIT業界にとって広大なブルーオーシャンであるとも言える。
だからこそ、IT業界はIoTの適切な利活用の在り方を生み出し、グローバル市場に対して競争力を備えるための適切な成長を遂げなければならない。パートナーエコシステムとオープン化という2つのキーワードは、その重要な鍵となるのである。
次回からは、こうした提言を踏まえて、実際に日本国内でどのようなIoTの活用モデルが生み出されているのか。当社がシステム開発に携わった事例を紹介していきたい。
- 後藤敏也
- ぷらっとホーム株式会社IoTビジネス開発部部長
- 90年代初頭よりLinuxを始めとするオープンソース市場創成に貢献した日本を代表するエバンジェリストの一人。2000年に超小型Linuxマイクロサーバー「OpenBlocksシリーズ」を生み出し、本シリーズは累計10万台近く出荷されるベストセラーに。現在は、このOpenBlocksシリーズの利点を生かしてIoT市場の開拓と普及に注力している。