「排泄のタイミングを超音波センサで事前に察知する」。そんな体内の変化を予知、予測するデバイスとサービスの開発に取り組んでいるのが、2015年2月に創業したばかりのトリプル・ダブリュー・ジャパンだ。中西敦士代表取締役は、老化の変化などから寿命の予測へと応用範囲を広げる夢がある。
排泄予知サービスのトリプルWジャパン
排泄予知デバイスを開発するきっかけは、中西氏が米国の留学中に漏らしてしまったことにあった。「事前に分かっていたら、トイレにいったのに」との悔しい思いがあったのだろう。そんな2013年頃、赤ちゃん用より大人用おむつが売れているとの報道もあり、「困っている人が多い」ことに気がついた。米ベンチャーキャピタルなど投資家や起業家に相談したら、「やってみたらどうだろう」と後押しがあり、中西氏は起業を決断。排泄予知に関するマーケット調査を始めた。
「介護現場に高いニーズがある」と分かった中西氏らは、介護福祉施設に泊まり込み、現場で困っている問題を見つけ出す。着目したのが介護の中で多くの時間を使う排泄。入浴と食事の時間は決められるが、排泄の時間は決められないので、水をいつ飲み、尿をいつしたかなどを調べた。その結果から排泄時期を推測し、トイレにつれていくが、「からぶりになることが少なくない」。予測は難しいということ。
中西氏は「誰でも予測できるものを作れないか」と考えて、超音波センサを使った排泄予知デバイスの開発に着手した。膀胱や腸など体内の変化を超音波がとらえて、排泄のタイミングをモバイル端末やパソコンに通知するもの。たとえば、「排泄は5分後」との通知があったら、トイレに連れていく。夜間で、ぐっすり寝ていたら、おむつの最適な交換時期を知らせる。
トリプルWは、おむつ交換や排泄物の作業にかかる時間やコストの削減、効率化をデータで示すため、5施設、約30人で実証実験を行っている(2016年9月時点)。その結果などから、作業負担の軽減は明らかになり、排泄予知デバイスの量産化にメドがたったことから、2016年末にもサービス提供を開始する。ベンチャーキャピタルなどから5億円超の資金調達ができたこともある。
排泄予知デバイスの開発は、中高の同級生でもあった内視鏡の開発者、ソフト技術者、電子回路設計者らと、米国にいる中西氏がスカプやチャットなどを使って議論しながら進めた。超音波を使うCTスキャンやMRI(磁気共鳴画像診断装置)の開発、製造を請け負う医療機器会社に製品作りを聞きながら、民生用向けの安価な排泄予知デバイスの設計に挑んだ。体内変化を予測するアルゴリズムの開発に2年近くも費やしたという。