国内クラウドベンダー3社が連携し、企業のデータを分散保存する仕組みを構築した。クラウドベンダーといえば外資系大手が目立ちがちだが、こうした連携は国内勢の活性化につながりそうだ。
重要なデータをクラウド上に分散して保存可能に
IDCフロンティア、さくらインターネット、ニフティの国内クラウドベンダー3社が先ごろ、企業のデータをそれぞれのクラウド環境に分散して保存できる仕組みを構築したと発表した。これにより、企業や組織の重要なデータの保護に向け、一段と安全性を高めることができるとしている。
3社が連携して取り組んだのは、富山市のエーティーワークスが開発した専用サーバ「Store-Box Air」を使ってデータを分割し、各社のクラウド環境に設置した大容量データ保存用のオブジェクトストレージに分散させて保存する仕組みだ。
データの保存には、細かく分割されたデータだけでは元データを復元できない「秘密分散技術」を採用。一方でこの技術は、分割データ自体に冗長性を持たせることで、仮に分割データの1つが欠けても元データを復元できるようになっているという。
分割データの保存先は「IDCFクラウド」「さくらのクラウド」「ニフティクラウド」のオブジェクトストレージであることから、各クラウドベンダーの地理的にも分散された国内データセンターに保存する形になるため、より安全な状態でデータを保管することができるとしている。
ユーザー企業にとっては、Store-Box Airを社内に設置することで、重要なデータをクラウド上に分散して保存できるようになる。エーティーワークスではStore-Box Airを9月28日から月額約3万円で提供開始する予定だ。
「秘密分散技術」を用いたクラウド分散保存のイメージ(出典:IDCフロンティア、さくらインターネット、ニフティの共同発表資料)
中小企業の課題解決へパートナーエコシステムを生かせるか
3社は今回の取り組みの背景について、次のように述べている。
「企業で保管するデータの種類は多岐にわたり、事業存続に必要な業務データだけでなく、個人のプライバシーに関わる医療データや、監視カメラで記録された映像など、慎重な取り扱いを求められる秘匿性の高いデータも増加している。特に中小企業にとっては、年々増大するデータを継続して保管し続けるために、数百万円から数千万円かかるストレージの設置コストや維持・運用工数の低減、またデータの漏えいや消失などといったリスクの最小化が大きな課題となっている」
こうしたことから、3社は今回の連携を通じて、「とりわけ中小企業の課題解決に取り組んでいきたい」としている。3社にとっては、もともと中小企業の顧客を多く抱えていることから、今回の取り組みは信用を一層高めるものとなる。
このところ、クラウドベンダーといえば外資系大手が目立ちがちだが、国内勢も今回の連携のような取り組みを図ってユーザーニーズを的確にとらえていけば、今後も存在感を十分に発揮できるだろう。ユーザー企業からすると、事業継続およびセキュリティの観点から、非常に重要な取り組みである。
ただ、中小企業ではまだまだデータ保護の必要性に対して理解が深まっているとは言い難い。また、Store-Box Airの設置についても自ら行える企業は少ないのではないか。そう考えると、3社それぞれのパートナーエコシステムをどう生かすかが重要なポイントになりそうだ。3社にはむしろ、その活性化のチャンスととらえて企業のクラウド活用を促進してもらいたいものである。