Gartner Symposium

金融機関のCIOはCEOに近い--ソニーの井原氏 - (page 3)

日川佳三

2016-10-10 07:00

過去の成功体験が次の革新を阻害する

 経営理念の継承が大切であることを示す例として井原氏は、自身が担当したソニー・エリクソンの例を挙げた。エリクソンは基地局の技術に詳しいが、コンシューマー向けの事業が苦手だった。だからソニーはエリクソンと組んだ。

 ソニー・エリクソンは当初、18カ月連続で赤字を出したが、ヒットモデルが生まれて利益に貢献した。ところが、社長が変わっていくに連れて、理念が継承されずに、事業がうまくいかなくなったという。

 井原氏自身が関わった別の例からも教訓を得た。「いま好調な仕事でも、それを根底から覆す破壊的な技術、ビジネスモデルが常に存在することを肝に銘じなければならない。過去の成功体験が次の革新を阻害する。破壊的な技術開発を避けるのではなく、自ら積極的にそれに取り組む必要がある」(井原氏)

 井原氏がテレビ事業を担当した時、当時のソニーはトリニトロン管を採用したWEGA(ベガ)ブランドのブラウン管テレビで大きな利益を上げていた。時代はちょうどシャープ先導で液晶テレビが立ち上がっていた頃で、ソニーのスタンスは「いかにブラウン管を主軸に、いかに生き残るか」だった。

 その後、BRAVIAブランドで液晶テレビに参入し、何とか市場での存在感を取り戻した。しかし、技術の蓄積に時間がかかり、利益で遅れをとった。

 講演の最後に井原氏は、盛田昭夫氏が言っていたという3つのクリエイティビティを紹介した。この3つのクリエイティビティがそろって初めて、ビジネスが花咲くという。

 1つは、発明、発見、技術革新のクリエイティビティだ。これがないと始まらない。1つは、プロダクトプランニング(製品企画)とプロダクション(製品化)のクリエイティビティだ。よい製品を低価格で提供する。1つは、マーケティングのクリエイティビティだ。ウォークマンも最初は商売になるのか疑われた。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]