「ITの競争力(柔軟性やスピード)が金融機関の競争力になる。業務を変えたり新しいことを始めたりする際に、ITシステムが重要な位置を占める」
ソニーフィナンシャルホールディングス 取締役会長/ソニー生命保険 取締役会長の井原勝美氏は10月5日、ガートナー ジャパンが開催したイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2016」で講演した。
講演では、ソニーが金融事業を始めた理由と、その後の成長要因、さらに金融事業の中核の1つであるソニー生命保険がIT技術をどのように活用しているのかについて解説した。
ソニーフィナンシャルホールディングス 取締役会長/ソニー生命保険 取締役会長の井原勝美氏
ソニーが金融事業に参戦したのは1981年のこと。ソニー・プルーデンシャル生命保険(現在のソニー生命保険)が営業を開始した。その後は、1999年にソニー損害保険、2001にはソニー銀行を開始している。
金融事業は順調に推移しており、利益面でソニーグループを支えている。2015年度のセグメント別業績では、金融が1565億円でトップ。ゲーム&ネットワークサービス(887億円)と音楽(873億円)が続く。
米国の製品サービスにソニーのマーケティングを組み合わせる
ソニーが金融事業を始めた経緯として井原氏は、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏がシカゴに渡米した際に、生命保険会社のPrudentialの高層ビルを目にした件を紹介した。盛田氏は「いつか金融機関を持って、このような立派なビルを建てたい」という夢を持った。
その後の1981年4月1日に、合弁会社としてソニー・プルーデンシャル生命保険が営業を開始。すでに米国で提供していた「ライフプランナー」制度を国内でも開始した。キャッチコピーは「きょうから生命保険が変わる。ライフプランナーが変える。」だった。「質の高いコンサルテーションをベースとしたアプローチ」(井原氏)だ。
「事業には成功の方程式がある」と、井原氏は言う。例えば、米国で成功している商品やサービスやコンテンツを、ソニーが得意とするマーケティング能力をもって国内で販売するというものだ。ソニー生命保険とソニー・ミュージックエンタテインメントが、この方程式に当てはまる代表だという。
業界の常識に囚われずに素人同然のアプローチでマネジメントに当たることも、成功の方程式の一つ。「ゼロベースでビジネスモデルを作る」(井原氏)