Salesforce.comが10月4日から7日まで米サンフランシスコ年次イベント「Dreamforce 2016」を開催した。2日目の基調講演では、顧客の成功を重視する同社らしく顧客企業を中心にSalesforceの既存製品と、人工知能(AI)の「Einstein」などの最新機能を紹介した。ここでは、電力管理のSchneider ElectricとフィットネスバンドのFitBitを取り上げたい。
発電所から顧客までシームレスに――大手電力管理のSchneider
フランスの電力管理大手のSchneider Electric、創業1836年で今年180周年を迎える古参企業だ。世界のオフィスビルの約半分が電力管理に同社の機器を利用しているといわれるSchneiderだが、必須インフラである電気という性質上、顧客関係管理や迅速なサービスは重要だ。そこで8年前にSalesforce.comを導入して顧客関係管理システムを構築した。これを機に、サービス、分析、モバイルと利用を拡大している。具体的には、Salesforceの「Sales Cloud」「Service Cloud」「Analytics Cloud」「Salesforce1」となる。
「エネルギー業界の例にもれず、弊社のシステムもこれまでサイロ状態だった。それまでは2けた、3けたレベルのシステムがばらばらにあったが、Salesforceにより発電所から顧客までシームレスに結びつけることができる」とSchneiderの最高経営責任者(CEO)、Jean-Pascal Tricoire氏は述べる。世界100カ国以上で展開し、従業員は約16万人。営業だけをみると2万2000人の社員がおり、サービス担当エージェントは4000人、契約社員とパートナーを入れると数十万人規模になる。これをSalesforceのクラウドプラットフォーム「Customer Success Platform」が支える。
Salesforceで最高製品責任者を務めるAlex Dayon氏
Schneiderを想定したデモを行ったSalesforceの最高製品責任者、Alex Dayon氏は、9月に発表されたAI機能であるEinsteinを利用したSales Cloud拡張機能「Field Service Einstein」を見せる。フィールド担当技術者の割り当てをインテリジェンスを利用して最適化、効率化するというシナリオ。配車サービス「Uber」にたとえ、「Uberのようにシンプルに、正しいタイミング、正しい場所、正しい機器・技術のルーティングが可能」とDayon氏。
また、見積もり管理の「Salesforce CPQ」も紹介、「すべての構成、価格、見積もり、契約、注文管理から学習する。見積もりから成立まで30%の高速化も可能で、リードからキャッシュまでを縮めることができる」とした。
フィールドや営業担当はほぼ全てのことをスマートフォンで行えるようにSalesforce1でアプリを構築しているが、ここでは最新機能「MySalesforce1」を披露した。顧客が自社ブランド、ロゴを付けたアプリをアプリストアで配信できるもので、Salesforceのライトブルーではなく、Schneiderのグリーンのロゴがついたアプリをアプリストアに並んでいる様子を見せた。
Sales CloudでもEinsteinをデモ。分析の結果32%が成立に結びついていることがわかったのち、残りの68%について何が原因なのかを見る。決定権のある担当者とやりとりがないことが原因とわかると、メールを送るようにEinsteinが促す
メールボタンをクリックすると決定権がある人のアドレス、本文が自動生成された下書きが表示された
最後はIoT Cloudを見せた。Scheniderのデバイスからのデータと顧客データの両方を結びつけて管理できるもので、デモでは顧客の装置に異常が発生していることが分かり、フィールド担当者がアプリから技術者を割り当てた。画面で技術者がどこにいるのか、いつ到着するのかを確認できる。割り当てられた技術者はARヘッドセットを使ってマニュアル通りに点検と修正を行った。
SchneiderのTricoire氏は、「次のフロンティアは、顧客を数百ものエネルギーオートメーションと結びつけること」と語る。「AIが顧客のサポートや支援をスマートに。ここでSalesforceは差別化になる」とEinsteinへの期待を語った。
Schneider ElectricのCEO、Jean-Pascal Tricoire氏(左)、右はSalesforceのCEO、Marc Benioff氏