松岡功の一言もの申す

オラクルがIaaSに注力し、AWSと真っ向勝負する理由

松岡功

2016-11-02 12:07

 オラクルがクラウドサービスとして、SaaSやPaaSに続けてIaaSにも本格的に力を入れ始めた。先行する競合との熾烈な戦いが予想される中、なぜ同社はIaaSに注力するのか。

日本オラクルがクラウドイベントでIaaSへの注力を強調

 「すでに多くのお客様に使われているオラクルのデータベースやその上で動くアプリケーションをオラクルのIaaSへ移行していただければ、相当のコスト削減を図ることができ、ご要望に応じた柔軟な構成で利用していただける」

 日本オラクルの杉原博茂 取締役 代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)は、同社が10月25~26日に都内ホテルで開催したプライベートイベント「Oracle Cloud Days Tokyo 2016」の基調講演で、オラクルがIaaSに注力する理由についてこう語った。

 同イベントは、米Oracleが9月にサンフランシスコで開催した「Oracle Open World 2016」で明らかにしたクラウド事業戦略について、日本市場での展開を顧客企業に披露したもので、最大の話題はまさしくIaaSへの注力だった。


記者会見に臨む米OracleのSteve Daheb Oracle Cloud担当シニアバイスプレジデント(左)と日本オラクルの竹爪慎治 執行役員クラウド・テクノロジー事業統括Cloud Platform事業推進室長

 杉原氏に続いて講演したOracleのSteve Daheb(スティーブ・ダヒーブ)Oracle Cloud担当シニアバイスプレジデントは、まず企業のクラウド利用の現状について、「パブリッククラウドは世の中のワークロード全体の6%程度にしか使われておらず、本格的な普及はまさにこれからだ」と指摘。その上で同社のIaaSについて、「業界最高水準のストレージやネットワーク、さまざまなユースケースに対応した拡張性の高いセキュアなコンピュートを実装している」と強力ぶりを訴えた。

 Daheb氏は講演後、日本オラクルの竹爪慎治 執行役員クラウド・テクノロジー事業統括Cloud Platform事業推進室長とともに記者会見に臨み、あらためてOracle Cloudの内容やアドバンテージについて説明。講演では示さなかったAmazon Web Services(AWS)のクラウドサービスとのコストパフォーマンスを比較した図も披露し、IaaSを含めたOracle Cloudの優位性を強調した。(関連記事参照)

IaaSはコスト削減ニーズに応えるクラウドの“入り口”

 ただ、IaaS市場は先行するAWSをはじめとして競合がひしめく激戦区だ。ハードウェア事業も展開しているオラクルとしては、IaaSに本格的に打って出るのは当然かもしれないが、筆者が素朴な疑問として感じたのは、オラクルが競争力を持つPaaSやSaaSには構造上IaaSが含まれていることを考えると、わざわざIaaSを切り出してAWSなどと真っ向勝負する必要があるのか、という点だ。PaaSやSaaSをクラウドサービスの主戦場に導けば、競合と同じ市場で戦わずしてIaaSも拡大できるのではないか。そこで、こうした疑問を会見の質疑応答でぶつけてみた。すると、Daheb氏は次のように答えた。

 「クラウドサービスのオファリングとしては、選択肢を提供するという意味でもSaaS、PaaS、IaaSをすべて手掛ける必要がある。また、お客様が利用されているオラクルデータベースのバージョンが古かったり、その上でオラクル以外のアプリケーションを使用されている場合などは、まずIaaSに移行してコスト削減を図っていただくのが得策だ。オラクルがIaaSに注力するのは、お客様のそうしたニーズに対応するためである」

 また、竹爪氏も「これまでPaaSを展開してきた中で、お客様から、まずはIaaSを導入してコスト削減を図りたいというご要望を多くいただいた。そこで、クラウドサービスへの“入り口”としてIaaSを本格的に手掛けることにした」とのこと。さらに同氏は、「その入り口で他社のIaaSを導入すると、オラクルへ載せ替えるのが難しいとのお客様の声も聞いており、IaaSからPaaS、SaaSへとオラクルのリソースを有効活用していただけるようにするためにも、IaaSに注力する必要があると判断した」と語った。

 ユーザーがクラウドサービスを導入して、まず実現したいのはコスト削減だ。IaaSがその「入り口」になるという竹爪氏の話は本音だろう。すでに他社のIaaSを導入したオラクルユーザーも少なくない中で、さらにオラクル以外のアプリケーションを使用するユーザーに対しても、オラクルのIaaSの魅力をどのように訴求するか。注目しておきたい。


Oracle CloudとAWSクラウドのコストパフォーマンス比較(出典:日本オラクルの資料)

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