松岡功の一言もの申す

年商100億ドル超が見えてきたAWSのこだわりから得た教訓

松岡功

2016-08-04 12:00

 年間売上高100億ドル超が見えてきた米Amazon Web Services(AWS)。日本法人の幹部に最近の顧客動向について聞いたところ、どうやら“大きな山”が動き始めたようだ。どういうことか。

AWSがAmazon.comの“稼ぎ頭”に

 米Amazon.comが先頃発表した2016年第2四半期(4~6月)の決算によると、クラウド事業を担うAWSの売上高は前年同期比58%増の28億8600万ドル、営業利益は同135%増の7億1800万ドルとなり、快進撃が続いていることを見せつけた。

 Amazon.comの中でのAWSの割合を見ると、売上高では10%程度だが、営業利益では56%を占めている。つまり、AWSはAmazon.comの中でも“稼ぎ頭”となっている状況が浮き彫りになった。

 加えて今回の決算で見えてきたのは、AWSの年間売上高が2016年で100億ドルを超えるのが確実になったことだ。2016年第1四半期(1~3月)の売上高は前年同期比64%増の25億6600万ドルだったことから、第2四半期の数字を合算すると54億5200万ドルとなり、残り半年が横ばいだったとしても100億ドルを突破する。今の勢いだと120億ドルに達する可能性もありそうだ。

 そうした中で、AWSの日本法人であるアマゾンウェブサービスジャパンがAWSの最新動向に関する記者説明会を開いたので、特に最近の顧客動向に変化はないかを聞こうと訪れた。説明に立った同社の岡嵜禎 技術本部長によると、AWSが提供するクラウドサービスのユーザーは100万人を超え、日本の顧客企業数は2万社以上に上る。また、サービスとしては現在70を超えるポートフォリオを形成しており、それらの機能の追加や改善については2015年で722の機能に及んだという。

AWSクラウドサービスのポートフォリオ
AWSクラウドサービスのポートフォリオ(出典:アマゾンウェブサービスジャパンの資料)

改めて問う「クラウドのメリットとは何か」

 では、最近の顧客動向に変化はないか。説明会の質疑応答で聞いたところ、岡嵜氏は次のように答えた。

岡嵜禎
アマゾンウェブサービスジャパンの岡嵜禎 技術本部長

 「最も実感しているのは、基幹系システムをクラウドへ全面移行しようと取り組むお客様が増えてきていることだ。例えば、SAPのERPについてはすでに国内のAWSクラウド上で100システム以上の稼働実績があるが、こうした動きも引き続き活発だ。とはいえ、この取り組みは多少の時間と手間をかけて行われるので、当社ではどのような移行形態のステップでもお客様をご支援できるようにサービスの拡充に努めている」

 筆者の記憶では、基幹系システムのクラウド全面移行に取り組む顧客企業が出現し始めたことを同社が言い出したのは2年ほど前だ。岡嵜氏によると、それが最近では「増えてきている」というわけだ。冒頭で「“大きな山”が動き始めた」と書いたが、大きな山とは巨大な基幹系システム市場のことを指したつもりである。

 また、クラウドのハイブリッド利用についてAWSの見解を聞いたところ、岡嵜氏は「ハイブリッド利用については、先ほどお話しした移行形態のステップとしてあり得る。ただ、クラウドサービスのメリットを最大限活用するためには、できるだけクラウドへの移行をお勧めするのがAWSのスタンスだ。その意味では、ハイブリッド利用は過渡期的な措置だと考えている」と答えた。

 「ハイブリッド利用は過渡期的な措置」との表現に、クラウドサービスを推し進めてきたAWSのこだわりを感じる。そのこだわりから得た教訓を一言もの申し上げておきたい。それは、改めてクラウドサービスのメリットとは何かをよく考えることだ。ユーザー企業としては、その本質を見失わないようにしたいものである。

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