本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本オラクルの杉原博茂 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)と、米Proto LabsのVicki Holt 社長兼CEOの発言を紹介する。
「オラクルにとってAWSは“好敵手”」 (日本オラクル 杉原博茂 取締役 代表執行役社長兼CEO)
日本オラクルの杉原博茂 取締役 代表執行役社長兼CEO
日本オラクルが先ごろ、データベースの最新版「Oracle Database(DB)12c Release 2」による企業システムのクラウド移行を支援する取り組みに関する記者発表会を開いた。杉原氏の冒頭の発言はその会見で、クラウド上のデータベースで最大の競合相手になり得るAmazon Web Services(AWS)に対しての見方を示したものである。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは競合するデータベースと比較したOracle DBの優位性についての話にフォーカスしてみたい。
杉原氏がまず強調したのは、競合するデータベースに比べてOracle DBの利用環境がオープンであることだ。同氏によると、「Oracle DBはどのプラットフォームでも同じデータベースが動作するとともに、アプリケーション資産を変更せずに他のプラットフォームへ容易に移行することができる」と説明。一方で、「他のデータベースはハードウェアやプラットフォーム独自のスタックにロックインされるとともに、他のプラットフォームに移行する場合には既存資産を捨てる必要がある」と指摘した。
Oracle Databaseがオープンなデータベースであることを説明
また、杉原氏に続いて、Oracle DB最新版の特長や競合状況について説明した米Oracleデータベース・サーバー技術担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのAndrew Mendelsohn(アンドリュー・メンデルソン)氏は、とくにAWSクラウド上のデータベースとの比較について多くの時間を割いた。
それによると、クラウド上でのデータベースとして、Oracle DB最新版はAWS上の「Aurora」に対して、「オンライントランザクション処理で35倍高速」「混合ワークロードで1000倍高速」といったベンチマーク結果を示し、性能面で大きな差があると強調。さらに利用料金についても、AWSより安価であることを訴えた。
まさしくAWSへの対抗心をむき出しにした形だが、ふと筆者の頭に浮かんだのは、「ならば、ライバルであるAWSのクラウド上でOracle DBを使えないようにすればよいのでは」と。もちろん、既に多くのユーザーがAWS上でOracle DBを使っているので現実的ではないが、あえて会見の質疑応答でそう聞いてみた。
すると、Mendelsohn氏は「お客様にとってメリットになっている」と予想通りの回答だったが、杉原氏は直接的な返答は控えるとしたうえで、次のように語った。