日本オラクルは10月24日、企業のクラウド移行を支援する機能を搭載した「Oracle Database(DB) 12c Release 2(12.2)」と企業のクラウド移行を支援する取り組みに関する会見を開催した。
米国で開催されたイベント「Oracle OpenWorld 2016」の中で、最高技術責任者(CTO)のLarry Ellison氏はAmazon Web Services(AWS)との対決姿勢を全面に出したが、その姿勢は今回の会見でも同じだった。
米本社でデータベース・サーバ技術担当のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるAndrew Mendelsohn氏は「Oracle DB 12cはクラウド向けにマルチテナントアーキテクチャを採用し、低コストでパブリッククラウド、プライベートクラウド、どちらのクラウドでも使うことができる。AmazonのデータベースはAWS上でしか動作しない。クラウドデータベースとしてどれがベストなのかを考えてほしい」とAWSデータベースと比較して優位性をアピールした。
日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼CEO 杉原博茂氏
どこでも動くOracle DB
会見の冒頭、日本オラクル 取締役 代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の杉原博茂氏がOracle DBの歴史を紹介。2013年に登場したOracle DB 12.1はクラウド時代の“Database as a Service”を実現するものとして登場した。Oracle DBにとっては1984年にリリースされたOracle 4を第1世代とするとOracle DB 12.1からが第4世代となる。
杉浦氏は「第4世代の第2弾製品である12.2は真にオープンを実現している。他社のデータベースと比較すると、どのプラットフォームでも同じデータベースが動作し、アプリケーション資産を変更せず、他のプラットフォームに容易に移行できる。他社のデータベースを見ると、例えばIBMさんのDB2は動作するハードウェアごとに異なるDB2が存在し、他のプラットフォームに移行する際には既存資産を捨てなければならない」と他社製品と比べてOracle DB 12.2のメリットをアピールした。
製品の特性として、多種多様なアプリケーション開発言語をサポートしていること、1986年のANSI標準化されたSQLによるデータアクセス、Amazon Aurora、SAP HANAなど主要データのほとんどをサポートしている。
杉原氏は続けて「これこそOracle DBの本当の強み。これをジャッキアップしているからこそ、クラウドへの移行が実現できる。クラウドファーストを実現し、小規模からエンタープライズまでDatabase Cloud Serviceを実現する」とOracle DB 12.2がクラウドに最適化されていることを強調した。
Oracle データベース・サーバ技術担当エグゼクティブバイスプレジデント Andrew Mendelsohn氏
続けて登場したMendelsohn氏はクラウドデータベースを念頭に「どのクラウドがベストなのか?」とAWSとOracle Cloudを比較した。
「Oracle Cloudには誤解されている部分がある。AmazonのデータベースであるAurora、Redshift、DynamoDBはいずれもAWS上でしか動作しない。オープンソースではない。それぞれに互換性もない。Oracle DBはオンプレミスでもAWSでも、Oracle CloudでもAzureでも動作する。Oracleの方がAWSよりも開かれている」(Mendelsohn氏)
ベンチマークでの比較についても結果を公開(PDF)している。Oracle Cloud上でのOracle DB対AWS上のOracle DBの比較などさまざまな局面で両製品を比較して「Oracle CloudはAWSよりも高速」と強く主張した。
コストについても「Amazonは本当に低コストか?」と疑問を投げかけ、データベース専用機「Oracle Exadata」の機能をサービスとして中堅中小企業向けに提供する「Exadata Express Cloud Service」を月額175ドルから始められる点、エントリレベルからミッションクリティカルなデータベースワークロードまでのスケールがあることでのコストパフォーマンスの良さがあると説明した。
Oracle DBとAWS提供のデータベースを比較
日本オラクル 執行役副社長 クラウド・テクノロジー事業統括 石積尚幸氏
Oracle DB 12.2は、高度なリソース管理でDBサーバ統合に必要なプロセッサ数を削減、最大で4096のデータベースをセキュアに統合可能。メモリ、CPU、I/Oリソースをワークロードごとに優先順位を付けて管理できる。
「マルチテナントアーキテクチャによってアプリケーションは仮想的なデータベース単位で独立し、メモリとプロセスはデータベースレベルで共有される。VMwareによる仮想化では、実際に運用コストとはあまり下がらないが、Oracle DBで採用しているアーキテクチャでは、本当の意味でコストを下げることができる」(日本オラクル 執行役副社長 クラウド・テクノロジー事業統括 石積尚幸氏)
Oracle DB 12.2はExadata Express Cloud Serviceにも活用されている。同サービスは税別で月額2万1000円から利用できる。Exadataで提供されるフルマネージドサービス、データベースは完全に暗号化され、提供するOracleもユーザーデータにはアクセスできない状況となっている。
こうした機能やサービスに加えOracle Cloudを活用したデータベーステスト、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)向けに「ISV Cloud Readyプログラム」、Oracle DB 12.2用のコンサルティングサービスメニューも提供する。2017年5月まで無償で3000人のクラウドエンジニアを育成するためのセミナーも開催する。
同社は、こうした施策によりクラウドへの移行を進める企業を増やしていく考えだ。「クラウドへ移行したくないという企業に対しては、競合他社はクラウドに移行してコスト削減し、新しいサービスを始めていると訴えていく。早くクラウドに移行し、コストを削減して新しいサービスを作るようOracleは全面的に支援する」(Mendelsohn氏)