もしも映画「マトリックス」の主人公ネオが、人間をエネルギー源として稼働する人工知能を打ち負かすためにIT技術者に支援を求めたとしたら、以下のような会話が交わされることになるかもしれない。
ネオ:「エネルギー源となる人間を培養するポッドを見てくれ。技術的な解決策を見つけてもらいたいんだ」
IT技術者:「この手のネットワークは完全に仮想化できる。このサイズのアレイであれば、プロビジョニングにかかる時間を半分に、いや、うまくやれば3分の1にできるはずだ」
ネオ:「じゃあ、『マトリックスリローデッド』は要らないというわけか。奇跡だ」
IT技術者:「奇跡なんかじゃない。ただのクラウドだ。今じゃ誰もがやっていることだ」
これは、VMwareが公開した「I.T. > Sci-Fi」というポッドキャストシリーズの第1話に登場する会話だ。仮想化大手である同社が、有名なSF映画をパロディーにしたポッドキャストを公開した理由はどこにあるのだろうか?同社は、過去の実績を重視する幹部や、ハードウェア重視でキャリアを築いてきたITプロフェッショナルといった、VMware製品に懐疑的な潜在顧客にリーチしようとしている。
ポッドキャストシリーズに登場するChuckとRavi。
VMwareのThought Leadership担当臨時シニアディレクターを務めるNicole Valencic氏は米ZDNetに対して、「われわれは、ハードウェア主体でものごとを考えているこういった潜在顧客が、ダクトテープや結束バンドを持ってそこら中を歩き回りながらネットワークを編み上げようとしている姿を想像してしまう」と冗談めかして述べ、「これまで、ネットワークを構築する唯一の方法はハードウェアを用いることだった(中略)われわれは、こうした保守的な解決策が引き起こす日々の難題を解決するうえでの、ネットワークの仮想化のメリットを伝えたかった」と述べた。
VMwareはこの目的を達成するためにSciFuturesに目を向けた。SciFuturesは、SFという道具立てを用いて、顧客企業の将来的なビジョンを伝えていくという広告代理店だ。同社の顧客には、VMwareやVisaといった企業が名を連ねている。
SciFuturesの創業者であり最高経営責任者(CEO)でもあるAri Popper氏は米ZDNetに対して、「VMwareがわれわれに声を掛けてきたのは、同社の製品やサービスについて、今までとは異なる、感情に訴えかけられるようなやり方でメッセージを伝えていくための語り部を求めていたためだ」と説明した。
Popper氏が4年前にこの会社を創業したのは、自らがマーケティング畑のSFファンであったという理由に他ならない。
「SFという道具立てを用いることで、顧客企業は将来に向けたより良い準備が可能になるとともに、自らが向かっていく先についてのより優れたイメージを思い浮かべられるようになるはずだとひらめいた」と述べる同氏は、「皆の創造意欲をかき立てる、そして説得力を持ったストーリーの集合体を作り出そうというわけだ」と続けた。
同氏が運営する企業は現在、エンジニアと科学技術者を雇用するとともに、100名近くのSF作家と緊密に連携している。彼らは、研究開発部門の責任者や最高技術責任者(CTO)、すなわちPopper氏の言うところの企業内でイノベーションを促進する立場の責任者とともに仕事をすることもしばしばだという。
SciFuturesは、物語や、SFのプロトタイプ作成を含むさまざまな概念的手段を通じて支援を提供している。彼らはAmazonの「Alexa」といった音声ユーザーインターフェース(UI)や、仮想現実に関する複数のプロジェクトでの実績を有している。Popper氏は「われわれは、クライアントのビジョンというレンズを通じて解釈できる、新たな、そして台頭しつつあるテクノロジを常に探し求めている」と述べた。
SciFuturesは最近、Visaのサンフランシスコとマイアミにあるエグゼクティブブリーフィングセンターの再設計という大規模プロジェクトを終えたところだ。没入可能なこの新たな環境では、バイオメトリクスや認証、セキュリティといった、支払いに関連するテーマの展示がなされている。また同社は、The Hershey CompanyやFord Motor Companyといった老舗企業とも仕事をしており、未来の戦闘を描き出すために北大西洋条約機構(NATO)と協力してもいる。
SciFuturesは、VMwareとの仕事において、ネットワークの仮想化と業務のモバイル化によって生み出される利点をSF仕立てで伝えている。VMwareのValencic氏は、「ネットワークの仮想化は、例えばネットワークのニーズに基づいたスケールアップやスケールダウンのほか、トラブルシューティングや、ネットワーク上のセキュリティ問題への取り組みを可能にする、はるかに優れたソリューションだ」と説明した。
SciFuturesのチームはすぐに、ユーモアにあふれた架空のポッドキャストをシリーズ化すると決定した。シリーズは8つのエピソードで構成されており、それぞれはマトリックスや「スター・ウォーズ」「2001年宇宙の旅」「トロン」「スター・トレック」「E.T.」「ターミネーター」「インデペンデンスデイ」をベースにしており、長さは約5〜8分となっている。各エピソードには、昔ながらの古風な考えを持つIT技術者のChuckと、その若い相棒であるRaviが登場する。この2人が古典的名作となったSF映画の世界に転送され、技術的な難題を解決していく形式なっている。
Popper氏は、「2人のやり取りは、現在の業界における力学を反映している」と述べる。「1人は非常に頭の回転が速く、経験が豊富で、問題を解決するための多くの鍵を手にしており、変化を好まないという、業界のプロフェッショナルだ。そしてもう1人は非常に聡明(そうめい)で、違った視点からものごとを見る若いプロフェッショナルだ」と続けた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。