IBMは米国時間12月6日、「IBM Watson for Cyber Security」のベータプログラムを拡充し、企業とも連携していくと発表した。Fortune 500に名を連ねる世界の企業が「IBM Watson」の認知コンピューティング能力を用い、サイバー犯罪に立ち向かう。
Watson for Cyber Securityはハッカーと戦っていくためのプロジェクト。1年にわたる研究の後、5月に複数の大学と連携し、セキュリティ関連データのさらなる蓄積を目指していた。今回、金融やヘルスケア、保険、自動車関連などの業界でも同プロジェクトを推進していくという。
ここでのWatsonの目的は、機械学習や自然言語処理といった人工知能(AI)テクノロジを用いて、構造化の有無にかかわらず膨大な量のデータを分析し、サイバーセキュリティの専門家らによる脅威の特定を支援することだ。
今回Watson for Cyber Securityのベータプログラムに参加すると発表された40の組織は、サイバー犯罪と戦うためのWatsonの能力を検証していく。参加組織には、Sun Life Financialやロチェスター大学医療センター、SCANA Corporation、三井住友銀行、カリフォルニア州立工科大学(California Polytechnic State University)、ニューブランズウィック大学、Avnet、Smarttechなどが挙げられている。
IBMは、サイバーセキュリティーにおける防御能力の強化にWatsonを使用することで、マルウェアの既知の亜種による攻撃か、特定のサイバー犯罪キャンペーンが絡む攻撃かを特定するといった、認知システムの新たなユースケースを示したいと考えている。こういったユースケースの場合、Watson for Cyber Securityは攻撃に使用されるマルウェアの情報や、それによって引き起こされる脅威のレベルを提供する。
またWatsonは、振る舞い認証を適用したり、コンテキストを用いたりすることで、ユーザーの行動が悪意を持ったものなのか、単に通常とは違った行動なのかを見極め、怪しい振る舞いを洗い出す。IBMは、ベータプログラムに参加する組織と協力し、サイバーセキュリティに関するデータと運用に対するWatsonの理解を高めるとともに、日々のプロセスにうまく統合していきたいと考えている。
認知テクノロジは、その成熟にともない、サイバー犯罪と戦ううえでの重要な武器になるとIBMは確信している。同社の調査によると、企業の7%が現在そういった目的で認知テクノロジを使用しており、その数は増えていくはずだという。
IBM Securityの最高技術責任者(CTO)Sandy Bird氏は、「顧客は認知テクノロジを実装するうえでの初期段階にある」と述べるとともに、「われわれの調査では、Watson for Cyber Securityのようなツールが成熟し、セキュリティオペレーションセンターに浸透していくとともに、その採用は向こう3年で3倍に増えることが示されている」と述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。