日立製作所と博報堂は12月2日、共同で実施した「第三回 ビッグデータで取り扱う生活者情報に関する意識調査」の結果を公表した。ビッグデータ利活用やIoTに関連する事業を進める中で、生活者のパーソナルデータ利活用に対する生活者の意識を調査したもの。調査は9月15日、全国の20~60代の男女1030人を対象としてインターネットで実施された。
調査結果の概要は以下の通り。
- パーソナルデータの利活用に伴うリスクへの不安と期待
- 公共空間内のカメラ映像利用についての許容度
- IoTやAI分野でのプライバシー不安
- 今後の法規制検討が求められる分野
パーソナルデータの利活用について、「活用への期待」と「リスクに対する不安」の大きさについて尋ねたところ、「不安が期待より大きい」とする回答が前回2014年調査の24.3%から今回27.9%とやや増加したものの、「不安が期待より大きい/やや大きい」とする回答は2014年の48.8%から今回52.0%と約半数となり、全体の傾向は前回調査と同様だった。背景としては、前回調査以降パーソナルデータ関連の漏えい事件が多発しており、メディアでの報道も多く、不安が継続している可能性が考えられるという。
なお性別による違いみると、「不安が期待より大きい/やや大きい」との回答は男性より女性の方が多かった(男性44.6%、女性59.2%で14.6ポイント差)。
公共空間でのカメラ映像の防犯以外の目的での利用について許容度を聞いたところ、同一人物の認識に対する許容度は「許容できる/やや許容できる」が50%に満たない低さだった。一方で、カメラ映像の利用を許容しやすくするための取り組みとして掲示物での告知やデータ削除の受付などを実施することに対しては、約半数が有効であると回答。
IoTやAIといった新たな技術について、その進展に伴うパーソナルデータの活用に不安を覚える生活者は、IoTで48.6%、AIで46.3%と、いずれも約半数にのぼった。強い懸念要素の内容を具体的にみると、IoT分野では「接続機器が増えることによってデータ漏えいの可能性が高くなっていること」(48.9%)や「本人が気づかないままデータ収集されること」(39.6%)、AI分野では「自身のデータを確認や削除できないこと」(39.0%)や「意図せず個人が特定されてしまうおそれ」(36.8%)が上位に挙げられており、生活者にとって想定外のリスクが生じるのではないかという不安感が浮き彫りとなった。
こうした意識を踏まえ、企業がこれらの技術を活用するにあたっては、IoTではセキュリティの確立や利用者などへの告知・周知の徹底、AIにおいてはデータの収集や分析内容を活用する際に適正な制御を組み込むなど、設計段階・運用段階を通じた多様なプライバシー保護の取り組みが重要であることが示唆されたとしている。
IoTや人工知能について、意識に近いもの
IoTのプライバシー面における不安要因
人工知能のプライバシー面における不安要因
今後の法規制検討の対象として最も多く挙げられたのは、「忘れられる権利」で69.9%。次いで「データ保護責任者の任命」(53.4%)、「データ保護影響評価の義務化」(50.1%)といった、企業にプライバシー保護の取り組みを促す項目が挙げられている。
なお、知識・関心度の高い層に限ってみると、「プロファイリングに基づく措置に服さない権利」が2位となっている。データに基づく属性の推定などによる不利益やマーケティング活動を受けることに対する危機意識が伺えることから、企業には、本人の求めに応じてプロファイリングなどの停止を受け付けるといったの自主的取り組みが求められるとした。