ビッグデータへの投資が拡大を続けている。その一方で、企業内でプロジェクトを見直すという兆候も見え始めている。このため、今後は順風満帆とはいかなくなるかもしれない。
ビッグデータという技術によって、企業が保有する顧客情報からセンサデータに至るまでの膨大な情報の海の中から、今まで活用されることのなかったデータの傾向が洗い出せるとされてきた。しかし多くの企業は、そういった目標の達成が容易ではないという現実に直面している。
米調査企業Gartnerが米IT企業の幹部を対象に実施した調査によると、2016年にビッグデータへの投資を実施した企業の割合は48%と、2015年に比べると3%上昇している。しかし、今後2年以内にビッグデータに投資する計画があるとした企業の割合は25%と、2015年の31%に比べると落ち込みを見せている。
また回答者199人のうちの4分の3近くが、ビッグデータに対する投資を既に実施した、あるいは計画中だとしている。しかし、これらのプロジェクトの大半はパイロット段階で足踏みしている。本番運用にこぎつけたのは15%のみとなっており、前年の14%から見てもわずかな伸びにとどまっている。
ビッグデータプロジェクトが抱える問題の1つは、適切な管理を欠いた寄せ集めのシステムというものだ。Gartnerによると「パイロットプロジェクトや実験プロジェクトが、本番運用に耐えられるような信頼性を考慮していない、その場しのぎのテクノロジやインフラを用いて構築されているという場合があまりにも多い」という。
Gartnerのアナリストらによると、多くの企業にとって、ビッグデータプロジェクトは今や、他の競合ITイニシアティブよりも投資優先順位が低くなっているという。自社におけるビッグデータへの投資の重要性が他のITイニシアティブと同程度、あるいはそれ以上であるとした回答者は11%にすぎない一方、重要性は低いという回答が46%にのぼっている。
GartnerのリサーチディレクターであるNick Heudecker氏は、事前に明確な投資対効果を提示できないビッグデータプロジェクトが多いためではないかと述べている。
Heudecker氏によると、これは大規模なデータを分析して有益な洞察を得るという考え方が否定されているわけではなく、ビッグデータがより幅広い分野で用いられるようになってきている表れだという。また同氏は、投資が減少しているのは、個々のビッグデータイニシアティブがより大きな計画に統合されているせいもあると付け加えている。そして「『ビッグデータ』という言葉の新味が失われていくとともに、こうしたことがより一般的になっていくはずだ。また、より大規模なデータセットや、より多様なデータセットの種類を取り扱うことがますます当たり前になっていくだろう」と述べている。
「組織は、ビッグデータが特殊なテクノロジではないという点を理解するようになった。今後は、ビッグデータを個別の取り組みとして考えないようにしなければならない」(Heudecker氏)
ビッグデータが抱える大きな問題
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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。