2017年を迎えた。今年のトピックの1つは、“攻めのIT”をそして、サービス開発の知見を自社で貯める”俺IT”をいかに実現していくかだと考えている。この場合の攻めのITとは、「企業IT分野でのシステムの効率化による生産性向上」と、「ITによる売り上げの増大」を指す。
まずは「企業IT分野でのシステムの効率化による生産性向上」について企業システムの領域でも数年前から幾度も指摘されてきた、業務に一般消費者向けのIT製品やサービス・技術を取り入れる「コンシューマーライゼーション」がさらに広がろうとしている点に注目したい。
がまんして利用するシステムは限界
ワークスアプリケーションズの調査によれば、大手企業向けシステムに対するアンケート調査でユーザーの80%近くが、「操作感」「情報のレコメンド」「検索性」「入力の頻度」「スピード」「デザイン」などで、「コンシューマーサービスと比べて業務システムに満足していない」ことが分かっている。消費者向けサービスではないから、という点で目をつぶってきた企業も多いだろうが改善による影響の大きさを示している。
アドレスを入力し、件名をつけ、あいさつ文をいれる、という「形式」が必要であるメールより、エンジニア間で社内外でのコミュニケーションにチャットツール「Slack」が人気なのはこうした傾向の裏返しだ。
企業システムの“使いにくさ”は例えば、統合業務管理システム(ERP)では、現行業務にあわせたカスタマイズを重ねた結果であり、狙った効果を享受できなった負の歴史を抱えている側面がある。
これまでの投資や現状で運用しているシステムを考えると、いくら普段プライベートで使っているアプリケーションに近く、UIやUXが優れる製品やサービスがあるといっても簡単に乗り換えるわけにはいかなかった。
知見を企業内にためることが必要
こうした中、これまでSIerやシステム開発に任せていた下流も含めたシステム開発を自社の中で持つため、ベンダーやユーザーの中で「内製化」に踏み出す動きが加速してきた。例えば、ローソンでは、自社のIT子会社としてローソンデジタルイノベーションを設立。アウトソース型のシステム開発から企業主導型のシステム開発体制に移行するという。
子会社を持つことでこれまでIT部門が担ってきた運用や数年単位の開発体制を刷新する。2~3カ月の開発スパンをアジャイルに動ける体制を構築することで2~3週間にし、開発スピードを5倍にするという。チャットボットなど最新のテクノロジを利用、UXに優れた企業ITの構築に取り組んでいる。
自社の従業員に身内だから使うにくいシステムでも我慢して利用しろ、という発想が通じなくなってきていることがうかがえる。
これまでの“レガシー”なテクノロジやシステムに加え、クラウド、ビジネスアナリティクス、モバイル、ソーシャルの4分野からなる“第3のプラットフォーム”に代表されるテクノロジを使いこなさないと企業の競争力は落ちていくという言説もここ数年でなじんできた。
IoTやAIといったキーワードを待つまでもなく、ITはすでに企業活動に深く浸透してしまっている。ITによる再興は日本の国家戦略であり、人口減少社会の日本で成長を続けるには新たなテクノロジを利用した新事業を作ることが必要である。