金融でのデューデリジェンスなどの機密情報に特化したファイル共有システムなどを提供するIntraLinksはシティ大学のロンドン・カスビジネススクールと共同で、2015年の全世界のM&A取引での情報漏えいを調査、2月9日に結果を発表した。
これによると、日本では3.1%が公表前に漏えいしていることが分かった。グローバルで見ると、2015年は前年に比べ情報の漏えいが増加しており、公表前に情報が漏えいした割合は8.6%。2014年は6%だった。
漏えい率が最も高かった地域別は北米の12.6%で、次いでアジア太平洋(APAC、7.2%)、ヨーロッパ中東アフリカ(EMEA、5.9%)、中南米(LATAM、0%)となっている。国地域別ではインドが20%と最も高く、香港(12.9%)、アメリカ(12.6%)と続いた。業種別では、不動産(12.9%)、医療(12.5%)、エネルギー&電力(9.3%)が上位3業種。
買収対象企業が 上場する国地域 | 2015年(順位) | 2014年(順位) | 2009~2015年(順位) |
---|---|---|---|
インド | 20.0%(1) | 15.8%(2) | 15.7%(2) |
香港 | 12.9%(2) | 22.2%(1) | 17.3%(1) |
アメリカ | 12.6%(3) | 8.0%(4) | 7.2%(6) |
カナダ | 12.5%(4) | 7.7%(5) | 6.2%(7) |
イギリス | 6.7%(5) | 5.3%(6) | 13.3%(3) |
韓国 | 5.3%(6) | 2.9%(7) | 9.3%(5) |
日本 | 3.1%(7) | 0.0%(10) | 4.3%(9) |
オーストラリア | 3.0%(8) | 2.0%(8) | 3.4%(10) |
フランス | 0.0%(9) | 10.0%(3) | 5.6%(8) |
ドイツ | 0.0%(10) | 0.0%(9) | 9.4%(4) |
情報が漏えいしたM&A取引での買収対象企業の買収プレミアム(経営に影響力を持つだけの割合の株式を取得する場合に支払う対価の上乗せ分)の中央値は53%。この数値は、情報漏えいのないM&A取引と比較して29%も高い。
規制機関が市場での不正行為の予防に努める中、情報漏えいが増加している背景について、IntraLinksは、場合によっては情報漏えいのメリットの方がリスクを上回るという判断がなされていることを挙げている。
今回の調査では、情報が漏えいしたM&A取引のうち、1件以上のライバル入札を引き付けた割合は6.4%で、これに対し漏えいしなかったM&A取引では4.4%という結果が出ている。この結果は、情報漏えいには、ライバルの入札引き込みや入札額の増大などの明確なメリットが伴うことを示している。
2009年1月1日~2015年12月31日に公表された、M&A取引データ、株価、インデックス価格情報をThomson Reutersから取得し調査した。最終的なM&A取引サンプル数は5024件。サンプルに含める基準としては、買収対象企業が上場していること、M&A取引に買収対象企業の過半数の支配権取得が含まれること、買収対象企業の株式にリターンが計上された実績が十分にあることを必須とした。