新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は1月中旬に、スマートグラスなどのウェアラブルデバイスを用いて製造や物流の現場作業を支援するシステム構築サービス「IoXソリューション」の提供を開始した。
2016年4月1日には、これに先立ち、IoTをシステム構築に活用するためのミドルウエア基盤を企画開発する専門組織「IoXソリューション事業推進部」を設立済み。記者向け説明会で、ユーザー企業の現場での実証実験を中心に、IoTアプリケーションの実像を紹介した。
サービス名に掲げるIoXとは、IoTとIoH(ヒトのインターネット)の上位概念を表現した、同社による造語だ。現場設備(モノ)と、現場作業者(ヒト)のデータを収集し、生産性の改善や保全に役立てることを狙っている(図1)。
図1 IoXソリューションの概念。モノとヒトのデータを収集して活用する。ヒトに対しては、現場作業をリアルタイムにナビゲーションする形の支援も行える
IoXを実現する手段として、作業者が身に付けて使うウェアラブルデバイスを利用する。これにより、現場作業のナビゲーションなどを実現できる。センサから得た作業者のスキルや体調、設備の状態などに応じて、作業者に対してタイムリーに指示を出せる。
システム構築の材料として、OSSをベースに独自にミドルウエアプラットフォームを開発した(図2)。これにより、デバイスからデータを収集・分析・活用して現場にフィードバックするアプリケーションを簡単に構築できるようにする。
蓄積データをバッチ処理で分析する用途には、同社が提供しているデータ分析の統合環境「Data Veraci」や、機械学習を用いた予測モデルの作成を自動化するソフト「DataRobot」などを活用する。過去のデータを利用した予防保全などに利用できる。
図2 IoXソリューションの標準サービスの概要。IoTを活用したシステム構築用のミドルウエア群などをOSSをベースに開発した
現場作業の遠隔支援や商品ピックアップ支援をデモ
IoXソリューション事業推進部の設立以来、同社の支援の下で実証実験に取り組んでいるユーザー企業は5社から10社。会見では、こうした実験の中から、現場作業を支援するアプリケーションと、物流を支援するアプリケーションなどをデモンストレーションして見せた。
現場作業を支援するアプリケーションは、ウェアラブルデバイスとして、頭部に装着する視線カメラ、情報を投影できるスマートグラス、作業者のバイタル情報や位置情報を計測するセンサ、などを使う。センサデータを使って作業者の状態や動きなどをリモートから把握できる。
現場作業を支援するアプリケーション(実証実験)の例。ウェアラブルデバイスを活用して、現場作業者と管理者が双方向に情報をやり取りする
さらに、スマートグラスを用いて、リモートから作業の指示ができる。作業を指示する管理者は、作業者の目線カメラの映像を見ながら、スマートグラスに画像/文字を表示させたり、音声で話しかけたりして指示を出せる。
物流を支援するアプリケーションは、ウェアラブルデバイスとしてスマートグラスを使い、AR(拡張現実)技術を利用する。棚から商品をピックアップする用途では、棚にQRコードを付けておくことで、探している商品が入っている棚と入っていない棚を、色分けして視覚的に判断できるようにしている。
ARを用いて商品棚からの商品のピックアップを支援するアプリケーション(実証実験)の例。スマートグラス上で、商品が入っている棚と商品が入っていない棚を色分けして表示する