ベルギーのアントワープ市では、行政サービスを実装する基盤として、ブロックチェーンを検討、実証実験に取り組んでいる。この基盤のPOC(概念実証)に技術を提供する予定のテックビューロが3月1日に発表した。
アントワープ市では「デジタル・アントワープ」というスローガンを掲げ、先進的でオープンなICTプラットフォーム「ACPaaS:Antwerp City Platform as a Service」の実装と、効率的な行政サービスの提供のために、新たなテクノロジ活用への挑戦に取り組んでいる。
今回、ブロックチェーンの「非改ざん性、高可用性、分散型公開台帳、なりすましを排除しデータの真正性を担保する」といった特徴を生かし、「出生・生存証明」「住民票」「生涯学習」「公共意思決定」といった分野の行政サービスを実装する基盤として、ブロックチェーンを検討、実証実験に取り組む。
具体的には(1)すべての市民の出生、婚姻、死亡まで、ライフイベントをブロックチェーン上に記録し、消えたり改ざんされることがないことを検証する「出生・生存証明」、(2)転居に伴う手続きを簡素化し、効率的に住民票を移動するため、住所などの情報の開示先をブロックチェーン上で管理することを検証する「住民票」、(3)(1)の出生・生存証明に、履修履歴や卒業証明書を追記する「生涯学習 」、(4)市長と市議会など公共サービスの意思決定や変更のプロセスを透明化し、これらのプロセスの記録と、公開された情報の真正性の担保に、ブロックチェーンをどう適用するかを検証する「公共意思決定」の4つ。
実証実験は、地方自治体のためにICT技術を評価しているベルギーの独立行政法人のDigipolisが、アントワープ市から委託され、政府から提供されるサーバを用いてブロックチェーン検証ラボ「The Blockchain Lab」で実施する。
The Blockchain Labでは、2016年12月19日にキックオフを迎えたが、この際実施したハッカソンに参加した107人の投票により行政サービスを実装する基盤としてテックビューロが提供している、プライベートブロックチェーン「mijin」を採用した。
テックビューロが選出された理由は、価格と開発スピードだ。ハッカソンでは同社が提供している、土所有権が移転可能な証明書をブロックチェーン上で発行できるオープンソースアプリケーション「Apostille」が利用され、アントワープの土地の登記システムを2週間で開発したという。今後はワンステップで複数者の署名による証明書を発行し、オンラインでの契約締結や自動履行が行える機能を追加していくとした。
テックビューロ代表取締役社長の朝山貴生氏は「mijinは既存のシステム開発に必要だった『DB設計』や『勘定開発』『デバッグ』といった工程をプロトコル部分でまかなえるため、開発工期が5分の1以下にできる。現在は、ベルギーの他米国や、タイ、ラオス、韓国、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどから引き合いがある。勘定適用やサービス利用に向け、数々の実証実験で実用レベルの結果を出している。あとは(ブロックチェーンを利用する)ユーザーの心理的障壁の打開が課題」とアピールした。
テックビューロが考えるブロックチェーンの5要素。mijinはこれらを備えるため、『DB設計』や『勘定開発』『デバッグ』といった工程を飛ばして 開発にはいれるという。