Linuxやオープンソース関連の企業を挙げる場合、最初に思い浮かぶのは自動車業界の企業にはならないはずだ。しかし、そうなって然るべきかもしれない。Mercedes-Benzを傘下に持つ独Daimlerが今回、Open Invention Network(OIN)に加盟した。OINは、オープンソース開発者が抱える特許訴訟の負担を取り除く目的で設立された団体だ。
Daimlerは1月、ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2017」で、Automotive Grade Linux(AGL)への加盟を発表していた。コネクテッドカー向けのLinuxベースのオープンプラットフォームを開発するオープンソース共同開発プロジェクトであるAGLには、著名な自動車メーカーが名を連ねている。Daimlerの他には、マツダやスズキ、本田技研工業、日産自動車、Ford Motor、世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車などが加盟している。Daimlerは高級自動車分野の世界的なリーダーとして、そして商用自動車の世界最大のメーカーとして、さらには電気自動車のパイオニアとして、オープンソースソフトウェアに注力する姿勢を示している。
OINは、核となるLinux技術と、隣接するオープンソース技術関連の特許を互いにクロスライセンスし合い、ロイヤリティーフリーで利用できるようにすることで、特許の不可侵性をもたらそうとしている。OINが所有する特許は、Linuxシステムを対象に自社特許の侵害を申し立てないと合意した企業に対して、ロイヤリティーフリーとほぼ類似のライセンス形態で与えらえれる。なお、OINのライセンスはオンライン上で署名可能だ。
なぜDaimlerやその他の企業はこういった動きに出たのだろうか?パテントトロールが幅をきかせており、IBM出願の「不在時における電子メールメッセージの自動応答」に関する特許が2017年1月に認められてしまうようなこの世界において、企業はできる限り他社の特許から身を守る必要がある。IBMのこの特許の場合、同社は特許権を行使するつもりはないと表明している。しかしほとんどの企業は、このような寛大さを持ち合わせていない。
OINの最高経営責任者(CEO)Keith Bergelt氏は声明で、「自動車業界と運輸業界は、インテリジェントカーによってもたらされる可能性という点で、大きな飛躍に向けた変革のまっただ中にある。インテリジェントカーシステムのイノベーションと普及に向けた最大の原動力は、『Linux Mobile』とIoTテクノロジを通じたLinuxだ。われわれは、DaimlerがOINに参加し、Linuxにおける特許の相互不可侵を支援することで、自動車業界でのリーダーシップを発揮するという点に深く感謝する」と記している。
また、Daimlerの知的財産とトレンド、イノベーションの責任者であるRalf Lamberti氏も同声明に、「Daimlerはインテリジェントカーの開発リーダーとして、ポートフォリオすべてで高品質な製品を提供することに全力を傾けている。われわれはOINに参加することで、引き続きイノベーションにまい進していくことを示すとともに、Linuxにおける特許の相互不可侵を支援していく」と記している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。