MS、ドローンの自律制御学習向けシミュレータをオープンソース化

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2017-02-17 11:30

 Microsoftは米国時間2月15日、人工知能(AI)プロジェクトの最新の成果として、ロボットやドローンといったガジェットの自律的な動作を学習させるための一連の訓練ツールを開発者に向けて公開したと発表した。

 このプロジェクトの中核を占めるのが「AirSim」だ。同社によるとAirSimは、ドローンの飛行やクラッシュを極めて現実に近いかたちで再現できるオープンソースのシミュレータであり、その目的は自律型のロボットや、その他の機体や車両を訓練するためのデータを生成することだという。AirSimは「Unreal Engine」をベースにしたシミュレータであり、GitHub上で公開されている。

 どのようなAIプロジェクトにも言える話だが、深層学習の一種である強化学習を通じて、つまり試行錯誤によってさまざまなタスクをこなすモデルを訓練するために必要となる十分な量のデータを確保することは、大きな課題の1つとなっている。

 Microsoftによると、精度の高いシミュレーション手法を提供することで、開発者は実世界での自律的な飛行や走行を目的としたAIシステムを訓練するための十分なデータを安価に生成できるようになるという。また、実世界での運用を開始する前に、安全な環境でドローンをクラッシュさせられるようにもなるという。

提供:GIPHY

 AirSimは、Microsoftの「Aerial Informatics and Robotics Platform」(航空情報科学及びロボット工学向けプラットフォーム)と呼ばれる新プロジェクトにおける成果の1つだ。同社のテクニカルペーパーによると、このプロジェクトの目的は、最新のグラフィックスハードウェアやプロセッサを用いて、重力や地磁気、大気の状態を模倣することで、シミュレーションと実世界の隙間を埋めることにあるという。

 同シミュレータは、影や反射、天候による影響も正確に描画できるようになっているため、コンピュータビジョンに頼るロボットにとって役立つものとなっている。

 Microsoftによると、このプラットフォームによってコストの低減と時間の短縮が実現できるという。

 「これによりさまざまなシナリオを作成できるだけでなく、実世界での数百秒を1秒間でシミュレートできるなど、アクションを早いペースで組み立てられるようになる。次に、実世界で行うには時間がかかるうえ危険も伴う複雑なミッションの実行や、学習も可能になる。さらに、シミュレーションにバグやミスがあったとしても、コスト損失は事実上ゼロになる。また、何度も機体をクラッシュさせることができるため、さまざまな条件下での実行手段をより深く理解できるようになる」

 Microsoftの研究者であるAshish Kapoor氏は、「野心的な目標は実際のところ、実世界で運用できるシステムを構築することだ。これはAI技術の次なる進歩、すなわち実世界のシステムについて本当に考えるAIだと言える」と述べている。


提供:Microsoft

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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