2016年の後半に世界各地で検出されたボットネットの地域別分布を見ると、その50%以上はアジア太平洋地域に集中している。国別分布で見た場合、上位10カ国にはフィリピンやインドネシア、インド、タイ、マレーシアが含まれている。
アジア太平洋地域には、世界のボットネットの過半数が集中しているという点で、同地域はボットネットにとって安住の地であることが証明された。ただ同地域は、広告詐欺やアドウェア、ランサムウェアにとっては未開の地であるようだ。
Malwarebytesは、2016年6月から11月までの間に、世界200カ国を超える国の1億台以上におよぶ「Windows」や「Android」を搭載した機器で検出された10億を超えるマルウェアのデータを評価した。その結果、ボットネットはフィリピンに最も集中しており、上位5カ国のうちの3カ国がアジア太平洋地域に属する国だったという。なおこの報告では、脅威をランサムウェアと広告詐欺マルウェア、Androidマルウェア、ボットネット、金融関連のトロイの木馬、アドウェアという6つのタイプに分類している。
フィリピンにおけるボットネットの検出数は、世界第2位となったインドネシアのほぼ4倍だった。また、インドも上位5カ国に入っており、タイとマレーシアもボットネットの多さで世界10位圏内に入っている。これらアジア太平洋地域の5カ国だけで、検出総数のほぼ半数を占めている。
なおこの報告書には、同地域の先進国におけるボットネット検出数は世界全体の0.5%未満であったことも記されている。
シンガポールに地域本部を持つMalwarebytesのアジア太平洋地域担当バイスプレジデント兼マネージングディレクターのJeff Hurmuses氏によると、「ボットネットはアジア太平洋地域で特に猛威をふるっている」という。
Hurmuses氏は「マルウェアのなかでも特にたちの悪い部類に入るボットネットは、長期間にわたって検出を逃れるうえ、その他のマルウェアによる脅威や感染をユーザーにもたらす恐れもある」と述べるとともに、「個人や企業が仕事や日々の生活でコンピューティングにますます依存するようになっているなか、新たなサイバー攻撃手法とその影響を意識しておくことは必須となっている」と述べている。
また、世界におけるマルウェア感染の地域別分布を見た場合、同地域の3カ国が上位10カ国に入っている。第4位のインドネシアと、第7位のインド、第8位のフィリピンだ。
同報告書には、マルウェア感染についてもインドネシアやインド、フィリピン、タイ、マレーシアといった新興国が脆弱であると記されているとともに、その原因としてこれらの国々における海賊版ソフトウェアの高い普及率や、サードパーティーによるアプリストアの多さが示唆されている。
とはいえ、この地域では詐欺関連のマルウェアやアドウェア、ランサムウェアといったものの検出数は少ない。これら3つの脅威カテゴリを世界的に見た場合、同地域で2.5%を超えている国はなく、攻撃は欧州や米国の先進国に集中している。
しかし、これら地域の先進国が脅威と戦う方法を身に付け、サイバー犯罪者らがアジア太平洋地域の先進国に注意を振り向けるようになると、この状況は変わる可能性がある。