高度なトロイの木馬型マルウェアが、世界中の金融機関を標的にしている。特に狙われているのは英国の銀行だ。
問題のマルウェアは、銀行から認証情報を盗む「TrickBot」だ。2016年以来攻撃を行っており、民間の銀行や資産運用会社、投資銀行、さらには退職者向け年金機関を標的にしているという。
しかし、攻撃対象はこれからも増えそうだ。IBM X-Forceのサイバーセキュリティ研究者によると、TrickBotのハッカーが標的にしている民間銀行は増大している。その中には、「世界最古の銀行」とされる英国拠点の銀行も含まれているという。
英国では、新たに銀行20行と8つの住宅金融組合がターゲットに加わった。主な標的は英国とオーストラリアの機関だが、スイスの銀行2行やドイツの金融機関、米国の投資銀行4行なども新たにターゲットになっており、イスラム法に準拠した銀行も対象になっているという。
攻撃対象は数が少なく狙いが絞られているが、攻撃頻度は上がっている。2017年第1四半期は月1〜3回(平均2.3回)だったが、4月は5回になっている。
提供:IBM Security
TrickBotの中核は、前身であるデータを盗むトロイの木馬「Dyre」と同様に、ブラウザを不正操作する手法が特徴だ。
だが、英国の銀行に対する攻撃では、リダイレクション攻撃が加わった。リダイレクション攻撃では、標的となるウェブサイトに悪意あるコードを注入するのではなく、不正な偽サイトに被害者をリダイレクトする。
偽サイトは、標的の銀行ウェブサイトと瓜二つで、元のサイトの証明書に基づいたSSL接続までほのめかしている。この偽サイトに認証情報を入力してしまうと、サイバー犯罪者が認証情報を利用して、金を盗んだり詐欺を働いたりできるようになる。
マルウェアチャートを上昇中
金融機関を標的にした最も蔓延しているマルウェアファミリのトップ10では、「Zeus」「Gozi」「Ramnit」「Dridex」といった悪名高き面々が上位を占めており、TrickBotはかろうじてランクインしている程度だ。しかし、精巧な点と、価値の高い標的に集中している点で、特に危険度が高い。
提供:IBM Security