多くの最高情報責任者(CIO)は、バイモーダルITを、顧客中心時代のテクノロジ企業に必要な競争力を得る手段として取り入れてきた。これは、マーケティング部門やCX部門をはじめとする事業部門が、テクノロジに対する要求を満たそうとして、自前の開発チームを持ったり、社外の組織と連携したりすることが増えたのを見たCIOが、組織内に摩擦を生むのではなく、組織の素早い変化を後押ししていく必要があることを認識するようになったためだ。またCIOは、事業部門が求めるイノベーションを提供する必要がある。
このため、一部のCIOは近道をして、動きが遅い従来のIT部門の役割を残したまま、並行して「スピード」が求められる役割を果たす仕組みを導入した。これが、バイモーダルITの始まりだ。
多くのCIOがバイモーダルITのアプローチを採用したが、現在ではほとんどのCIOが、すべてのIT部門が「スピード」を備えるべきだと考えている。もちろん、他のシステムよりも変化が少ないシステムもあるが、どんな変化も素早く実現される必要がある。今や、テクノロジの事情に合わせた、ペースの遅い変化は好まれない。動きの遅いIT部門は、必要とされなくなっている。テストでリリースを遅らせたり、セキュリティのためにプロジェクトを数カ月遅らせることは許されない。完璧を期すためにスピードを犠牲にすることはできなくなった。
CIOは、顧客が求めるスピードで活動でき、顧客やパートナー、従業員のイノベーションを後押しできるIT部門を生み出すそうとしている。ビジネスとテクノロジが融合した組織を作ろうとしているのだ。
以下では、バイモーダルITから脱却し、この変化を促進するために、最先端のCIOが行っている取り組みをいくつか挙げてみよう。
- 最先端のCIOは、技術を活用する能力を持った未来の顧客のビジョンを作り、IT部門や役員会、他の事業部門に説明して、IT部門に起こそうとしている変化に対する支持を取り付けている。
- IT部門の文化、スキル、技術、評価指標を変えようとしている。ビジョンから始めてIT部門に変化を促す場合もあれば、評価指標から始めてIT部門を引っ張っていく場合もある。いずれにせよ、この変化は必要不可欠のものだ。
- IT部門が持つスキルを変えるために、現在と将来において必要とされるスキルマトリックスを作成し、現在と将来のテクノロジ資産をマッピングしている。
- 最新のテクノロジプラットフォームとプロセスを取り入れている。パブリッククラウドの利用は一般的になったが、最先端のCIOは大規模なクラウドプラットフォームプロバイダーの後を追うようにして、クラウドによるイノベーションで顧客や事業部門の成果を高めようとしている。古いシステムのスピードと安全性を高めるために、マイクロサービスやAPIが活用されている。最先端企業の開発現場や技術を改善する取り組みでは、DevOpsとアジャイルが主流になりつつある。また、IT部門の機能の一部をアウトソースしている企業は、従来型のアウトソース契約から、より柔軟性の高いパートナーシップへと移行しつつある。
賢明なCIOは、バイモーダルITはスピードを高める革新的なビジネステクノロジを獲得するために必要なステップだったが、長期的な戦略ではないことを理解している。また彼らは、破壊的な新興企業に後れを取らないためには、できるだけ早く移行を始める必要があると考えている。
なお、Tim Sheedy氏はForresterのプリンシパルアナリストだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。