マイクロサービスは最新のサービス指向アーキテクチャであり、非常に優れた面もあるが、どんな場面にも適しているわけではない。場合によっては、メリットよりも害の方が大きい場合もある。
これは、技術によるビジネス変革の専門家であるAdam Drake氏が最近投稿した、マイクロサービスを導入する際に注意すべき点を説明するブログ記事に書かれていたことだ。ブログでは、運用オーバーヘッドの増加や性能、拡張性など、マイクロサービスにはさまざまな課題があると指摘している。
Drake氏はこの記事で、企業のニーズを評価して、マイクロサービスアーキテクチャが必要かどうかを評価するためのステップを提示している。同氏は、まず最初の2つのステップを実行した上で、「その段階で、もう一度マイクロサービスの導入が組織にとって正しいことなのかを検討するべきだ。この時点で、それまで抱えていた問題の多くは解決されている可能性が高い」と述べている。
- アプリケーションをクリーンアップする。これには、システムに優れた自動テストの仕組みを持たせ、すべてのライブラリ、フレームワーク、言語を最新バージョンにすることが含まれる。
- APIを利用する。「アプリケーションをリファクタリングし、分かりやすいAPIを持つ明確なモジュールに分割すべきだ」とDrake氏は述べている。「コードの断片がモジュールに直接アクセスすることを許してはならない。すべてのやりとりは、モジュールに用意されたAPIを通じて行われる必要がある」
- サービスを分離する。Drake氏によれば、この段階では、モジュールをアプリケーションから分離するが、同じホスト内に止めておく。「これによって、完全に分離されたマイクロサービスの利点をある程度まで享受することができ、しかも運用上の苦労は少なくて済む」とDrake氏は言う。このやり方では、通信の問題は残ってしまうが、各コンポーネントが分散ネットワーク上に散らばっている場合に生じる問題には悩まされずに済む。
- 分離したモジュールを別のホストに移す。「これを実行すると、ネットワーク越しの通信に関する問題を扱う必要が出てくるが、2つのシステム間のカップリングを心配する必要性は少なくなる」とDrake氏は述べている。
- ストレージ機能を分離する。Drake氏は、最後に「可能であれば、データストレージシステムをリファクタリングし、他のホスト上のモジュールが、そのモジュールのコンテキスト内のデータストレージに全面的に責任を負うようにする」と述べている。
- 組織の準備が整っているかどうかを検討する。マイクロサービスを扱える能力を持つ企業は、組織外からの支援をほとんど、あるいはまったく受けずに、いつでもリソースをプロビジョニングできるチームを持っている、とDrake氏は言う。「組織内の開発チームに、仮想かどうかに関わらず、新しいサービスをセットアップできる人材が1人から数人しかいないなら、マイクロサービスを採用する段階ではない」(Drake氏)
- モニタリングの準備を整える。「元々の大規模システムで、システムとアプリケーションの性能をモニタリングしていないようなら、マイクロサービスを導入しても失敗するだろう」とDrake氏は述べている。「システムのパフォーマンスを理解するための主なモニタリング指標には、システムレベルの指標(CPUやRAMの消費量)、アプリケーションレベルの指標(エンドポイントごとのリクエスト遅延や、エンドポイントごとのエラー頻度など)、ビジネスレベルの評価指標(1秒あたりのトランザクション数や1秒あたりの売上)などが含まれる」
- 継続的統合や継続的開発のための準備を十分に調える。Drake氏は、元々の大規模システムで、継続的統合および継続的デリバリー(CI/CD)が十分にできていないのであれば、マイクロサービスアーキテクチャの導入ほぼ不可能だと述べている。「10チームが100のサービスを持っており、すべて手動で統合テストとデプロイメントを行う必要があるところを想像して欲しい。同じ作業を1つの大規模システムに対して手動で行うのとどちらが大変だろうか。サービスが100個ある時に問題が起こる可能性と、1つの大規模システムで問題が起こる可能性では、どちらが大きいだろうか」(Drake氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。