「MUFGはスタートアップファースト」--オープンイノベーションに注力する理由 - (page 3)

山田竜司 (編集部) 飯田樹

2017-06-29 07:00

 松田氏:優勝するとメディア露出が全然違いますし、「MUFGのアクセラレータの優勝企業」という看板が付くことで、引き合いが増えたり資金を調達しやすくなったりします。賞金も出ますが、お金以上の価値として、その後の事業展開が優位に働いていくので、みなさん真剣です。

 藤井氏:DEMO DAYでは、参加スタートアップ各社の将来の顧客やビジネスパートナーとなる可能性のある地域金融機関やカード会社、保険会社、その他の事業会社も招待しています。懇親会ではスタートアップがそれぞれブースを出し、サービスのMVP(Minimum Viable Product)を展示して来場者とビジネスの話ができるように配慮もしています。

--エコシステムを作ろうとしているというか、自社だけではなくてオープンに連携しようという試みが感じられます。

 藤井氏:“スタートアップファースト”で考えているプログラムなので、参加スタートアップ各社のビジネスが立ち上がらないと、支援している意味がありません。MUFGとしても、支援の意味を含めて最初に協業したり、プロダクトのファーストユーザーになったりもします。

--連携しやすい分野は。実績を紹介してほしい。

 藤井氏:例えば、第一期に参加されたナレッジコミュニケーション、Alpaca、xenodata.labは、機械学習などAIを基軸にしているスタートアップです。顧客向けのサービス高度化と、社内の効率化の両面で使えるという意味で、AIとビッグデータは金融機関にとってキラーコンテンツであるため、比較的協業が進みやすい分野と思います。

 xenodata.labは、個人投資家向けに自動生成したアナリストレポートを提供する協業をカブドットコム証券と一緒に進めています。Alpacaはじぶん銀行と協業して外貨預金のAI化を、また三菱東京UFJ銀行と「AIトレーダー」などのプロジェクトを進めています。

 松田氏:AlpacaDBはチャートを画像認識できる技術を持っていましたが、この技術を過去のチャートの中で似た形の値動きを抽出することに適応する案は、プログラムの中でカブドットコム証券などとディスカッションをする中で出てきたものです。この案は商用化にいたりました。

--オープンイノベーションの連携を広げるために注力していることは。

 藤井氏:われわれは優れた技術やビジネスを持つスタートアップ企業に、プログラムに興味を持ってほしいと思っており、まずは支援して成果を出し続けることが非常に重要だと思っています。

 松田氏:大企業とスタートアップの連携を目的とするプログラムでよくあるのは、大企業とスタートアップをマッチングさせて「あとはご自由にどうぞ」というパターンです。

 一方、このプログラムでは、マッチングした後にスタートアップを支援しながら事業を作っていくことに注力していて、スタートアップのビジネスをアクセラレートすることにこだわっているので、成果が出るのだと思います。


コワーキングスペース「MUFG The Garage」の室内

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