--初めて実施した「Fintech Challenge 2015」の反響は。
藤井氏:「メガバンクがオープンイノベーションを始めた」ということで、世間的には話題になったと思います。具体的な成果としては、「FUNDECT」という、投資信託の知識を身につける支援をするアプリケーションをリリースしました。
また、インターネットバンキングでログインした顧客に対し、金融教育系の最適な記事を出し分けるマーケティング施策を実施しました。VRコンテンツを作るのが得意なスタートアップ企業と3DVRのマーケティングコンテンツを作って、支店で顧客に使ってもらったこともあります。
--金融機関でありながら「失敗してもいいからやってみよう」というカルチャーが藤井さんの周りには根付いていると感じます。それはなぜでしょうか。
藤井氏:結局のところ、新しいことが役に立つのか、うまく行くのかは、一度試してみないとわからないですよね。「石橋を叩いて、壊れそうなのでやらない」という旧来のカルチャーでは時代に対応できなくなっているといえるでしょう。「まずは試してみよう」というのは、スタートアップの世界では当たり前の話ですが、この考え方が広がってきたので、いろいろな取り組みを始めやすくなりました。
--この状況でどんなところを、競合として認識していますか。
藤井氏:テクノロジとデータを持っていて、データを処理する能力が非常に高く、デジタル時代のユーザーエクスペリエンスを作るのを得意とするプレイヤーは、既存の金融機関にとって脅威だといえるでしょう。
ITジャイアントと言われるGoogleやApple、Facebook、Amazon、Baidu、Alibaba、Tencentなどですね。こうした企業が金融サービスに参入していますが、金融以外の広告事業やソフトウェアサービスなどで収益を上げているので、価格や手数料の競争になると厳しい。
また、消費者の行動データを上流で押さえているので、消費者とのエンゲージメントが非常に強い。こうした企業に対抗できる仕組みを作ることで、顧客の消費行動の上流側に踏み込んでいく努力をしなければならないでしょう。本格的に、デジタル世界での戦いになっていくということです。
--そういったデジタル化施策の1つがアクセラレータ・プログラムであり、また今回のコワーキングスペースなどを作ることだと思うのですが、あらためて「MUFG The Garage」を作った背景とは。
藤井氏:アクセラレータ・プログラムを実施する際には、関係者が集まりやすいように、専用の場所を一緒に提供したほうが良いと考えています。アクセラレータ参加スタートアップやその他の関係者は、「MUFG The Garage」を24時間365日利用できます。「フラッと立ち寄った時に誰かいる」みたいな感じで自然とコミュニケーションを取れる場所を作りたかったのです。
金融機関のオフィスではないところで、目線をそろえて共に新しい事業やサービスを作っていくという象徴的な場所でもあります。こうしたワーキングスペースは第一期のときにもあったのですが、現在の半分以下くらいのスペースでした。今回はスペースを倍増し、またプログラム終了後も継続して利用できるようにする予定です。
イベントも頻繁(ひんぱん)に開催しており、最近では、5月23日にインターナルDEMO DAYという第二期の中間発表をやりました。参加スタートアップ各社はそこで出てきた課題を潰して、7月のDEMO DAYに向けて引き続き事業開発にまい進しています。
プログラム終了までの残り時間を示す時計