矢野経済研究所は、6月6日、国内デジタルサイネージ市場の調査結果を発表した。これによると、2016年度の同市場規模は前年度比116.2%の1487億7500万円で、2017年度は前年度比120.3%の1789億2000万円に達すると予測される。また、2020年度は3361億7,000万円にまで規模を拡大するとしている。
同調査は、2017年2月~5月に実施された。調査対象はデジタルサイネージシステム関連事業者、広告会社、ハウスエージェンシー、媒体社など。
デジタルサイネージとは、屋外・店頭・公共空間・交通機関などで、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するシステムの総称。今回の調査では、小型のスタンドアロン型は除き、ネットワーク型のみを対象としている。
同研究所では、同市場の2017年度以降の高い成長について、デジタルサイネージが一般化したことや、イニシャルコスト(初期投資費用)、ランニングコスト(運用・管理維持費用)の低価格化などを挙げている。また、訪日外国人向け対応や、東京五輪・パラリンピック、地方創生なども追い風要因としている。
さらに、2021年度以降については、東京五輪・パラリンピックが終了することで、2021年度に同市場規模は前年度比4.8%減の3199億500万円となるが、2022年度以降、市場はプラスに転じると予測している。
デジタルサイネージ国内市場規模推移と予測
同市場は、システム販売/構築、広告(広告枠)、コンテンツ制作の3分野で構成される。
システム販売/構築では、手軽で安価にデジタルサイネージを導入したい層と、スマートフォンなどとの連携やマーケティングデータとして活用する高付加価値なものを導入したい層の2種類のユーザーに対応している。同研究所では、現状では、手軽で安価にと考える割合の方が大きいとし、市場は緩やかに成長するとし、2020 東京大会後の反動も少ないとしている。また、同市場の課題の1つとに、システムに互換性がないことで、ユーザー企業にとってはメーカーに左右されずに配信を行うことができるシステムや、仕様の共通化の早期実現が望まれていると指摘している。
2016年度のデジタルサイネージの広告(広告枠)の市場規模は、前年度比121.9%の600億8100万円と推計している。稼働率100%のデジタルサイネージも増加基調にあり、場所によってはキャンセル待ちが発生している。この分野で目立つのは、ユーザー企業(広告主)が広告と販売促進の両方を兼ね備えたプロモーションを実施するケースが増加基調にあること。今後は広告枠を時間指定で購入できるような新たな出稿システムの検討もされており、同じロケーションやスペースにより多くの企業が広告を掲出できるようになり、市場は順調に拡大すると予測している。
2016年度のデジタルサイネージのコンテンツ制作の市場規模は、前年度比110.0%の260億6,000万円と推計され、2017年度は前年度比115.0%の299億7000万円になると予測。システム構築事業者などがコンテンツ制作ツールを安価に提供し、ユーザー企業自身コンテンツを制作する機会が増え、コンテンツ制作費は低下傾向にあるが、ブランド力を高めるため、高品質のコンテンツを望むユーザー企業も拡大傾向にある。今後、4K・8K(高精細な映像技術)に対応したコンテンツの制作により、価格の低下に歯止めがかかることが期待される。