ビズリーチで取締役を務める多田洋祐です。われわれは、HRテック(HR×Technology)のベンチャーとして、これまで6400社以上に対して採用を支援してきました。
前回は、人材獲得競争が進み、IT企業の採用難が加速するなかで、最高情報責任者(CIO)を含めた経営幹部と事業部が連携をして採用変革に取り組む必要性について解説しました。
今回は、採用変革のなかで重要視される「戦略人事」(経営戦略に基づく人事)という考え方や、それを実現する役割として注目されるHRビジネスパートナー(HRBP)やプロ・リクルーターについて、事例を交えて紹介します。
人材獲得競争によって広がる「戦略人事」とは
「戦略人事」とは、従来の管理・オペレーション業務を中心とした人事から、事業戦略の実現をサポートする戦略的な人事に転換すべきである、という考え方や役割を包括的に表す言葉です。
1990年代に企業の経営環境や人材獲得競争が激化するなかで、人事研究の世界的権威であるDavid Ulrich氏などにより提唱されました。いち早くGEが取り入れ、今では外資系企業だけでなく日系企業でも広がりを見せています。
『日本の人事部 人事白書2016』での約4000社への調査によると、95.2%の企業が「戦略人事は重要である」と認識していることが分かりました。
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しかし、その一方で「人事部門が『戦略人事』として活動できている」と感じている割合は25.8%にとどまり、大きな隔たりが見える結果となっています。
その要因と考えられる「経営戦略と人事戦略のリンクの阻害要因」に関する質問では、「経営陣と人事部との対話不足」「人事部が戦略パートナーとしてみなされていない」など、事業部門と人事部門の連携不足に関する課題が上位に挙げられていました。
そうした中で、「戦略人事」実現のために、事業部門と人事部門をつなぐポジションとして注目されているのがHRBPやプロリクルーターという仕事です。
人事部門が事業部門とどう連携しているのか
HRBPとは、経営者や事業責任者に対するビジネス上のパートナーとして、事業成長の実現を人と組織の面からサポートするプロフェッショナルを指します。従来の人事担当者とHRBPの違いはどこにあるのでしょうか。それは、「事業成長」に主眼を置き、人事施策を企画・実行している点です。