ビズリーチで取締役を務める多田洋祐です。われわれは、HRテック(Human Resource×Technology)のベンチャーとして、これまで6000社以上の採用業務を支援してきました。そのなかで多くの企業から、「経営変革のために外部から人材を採用したい」「従来の手法では採用が難しい」などの相談をいただいてきました。
近年、産業構造の変化や労働力人口の減少などにより、人材獲得競争がますます激しさを増しています。また、テクノロジの進化を背景に、ここ数年で採用手法も急速に多様化しています。
つまり、企業が人材獲得へ向けて自由に競争できるようになった一方、今までの採用手法のまま「受け身」の姿勢では優秀な人材の獲得が極めて難しくなっているのです。
そこで今回は、「最高情報責任者(CIO)が人事部門と連携すべき理由」を説明するために、まずは産業構造やビジネスモデルの変化から人材獲得競争の背景をひもとき、現在の企業で必要とされている人材像について紹介します。
日本の産業構造の変化
昨今の人材獲得競争が激化する背景には、日本の産業構造の変化があります。総務省「産業(3部門)別15歳以上就業者数の推移」によると、戦後の日本では、製造業や建設業を含む第2次産業が全産業の30%強を占め、商業やサービス業を含む第3次産業は45%程度にとどまっていました。
しかし、2000年代から始まったインターネットの普及に伴い、状況は大きく変化しました。直近では、第2次産業が全産業に占める割合は20%台に下がり、第3次産業が約70%を占めるまでに変化しているのです。
この産業構造の変化は、日本だけではなく今から30年前の米国でも起こっています。1980年代までの米国は製造業が隆盛でした。しかし、急速に広まったグローバル競争の影響で、労働力の安い国から安価な製品が出てくるようになります。
米国のメーカーはダウンサイジングを迫られ、ブルーカラーの労働力を海外に移転する必要に迫られました。実際、80年代から90年代にかけて、第2次産業の企業が減っていき、第3次産業の中心となるサービス業や金融業が増えていきます。
大規模な設備投資や原材料が必要である製造業を中心とした第2次産業より、サービス業を含む第3次産業のほうが従業員のパフォーマンスによるビジネスへの影響が大きいため、結果として人材の力が経営に直結する時代になってきました。
現在の日本でも同様の変化が起こり、「企業経営における採用力=経営力」と言っても過言ではなく、より人材の重要性が説かれる時代となってきているのです。