個人が自らのデータを囲い込み、信頼する企業にのみ共有する世界
広告ブロックもトラッキングブロックも「自身のオンライン行動履歴の提供を拒否する」ことを意味する。
一方、自分に対して最適な提案やレコメンドをしてくれたり、クーポンなどの何かしらなメリットが享受できるたりするのであれば、自身の詳細な情報を共有してもいいという生活者は存在する。
もし、PDSや情報銀行、今後さらに出てくるであろうCustomerTechによって個人が自身の情報を蓄積して提供のコントロールができるようになったら――。
自身の情報を共有してもいいと思えるような信頼できる企業のみが、これまで収集できていた以上のディープデータにアクセスできるようになる。
スペインに本社があり全世界で3億5000万人の利用者がいる通信事業者のTelefónicaがMobile World Congress 2017で発表したAIである「Aura」は単なるパーソナルアシスタントではない。
ユーザーがTelefónicaのサービスやプロダクトの利用履歴を全てPDS(Personal Data Space)に格納し、ユーザー自身でどのデータをどの企業に提供するかをコントロールできる。
また、Telefónicaは2018年に施行されるEUの「一般データ保護規則」(GDPR)に対応するため、個人が自身のデータ提供をコントロールし好きなブランドとのエンゲージメントを構築できるアプリを提供する英国のpeople.ioと提携した。
ドイツでは通信会社で契約者数シェア1位で傘下のO2が、4400万人以上のユーザーに対して「O2 GET」というアプリを提供することを発表した。
デジタルマーケティングにこそ必要な生活者側のプラットフォーム
繰り返しになるが、このような世界は、オフライン/オンラインデータの流通や統合が最も進んでいるデジタルマーケティングにこそ必要だ。
AdTechによってSSP(インターネットメディア広告枠の販売基盤)やDSP(広告主側の複数メディアの掲載枠を集めるアドネットワークなどからメディアを買い付ける基盤)、DMP(ユーザーの行動履歴などのデータを一元管理して顧客に合った施策を実施する基盤)といった仕組みができた。こうした媒体/メディアや仕組みは、広告主となる企業の広告/マーケティング効果最大化を担うものだ。
これと同様に、CustomerTechによって生活者のメリットを最大化するためのプラットフォームであるCSP (Consumer Side Platform)が必要ではないだろうか。
CustomerTechやCSPによって生活者と企業の力関係が均衡する