「医師の診察業務の効率化が期待できる。現在、類似症例に間する検索時間は約50分、判断する時間に約10分を要していたが、新たな技術では、検索時間がわずか数秒になり、判断までの時間を6分の1に短縮できる。医師が判断にかかっていた時間を短縮できる」としている。
共同研究を行っている広島大学大学院 医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室の粟井和夫教授は、「新たな技術は、医師の高度な診断を支援するものだと位置づけている。蓄積されているすべての画像データを共有し、利用することが可能になる。例えば、過去に50の類似症例があり、そのうち85%が肺ガンであったということがわかれば、治療方法が判断しやすくなり、さらに、どんな治療を行い、どんな反応をしたかが分かる」と強調する。
「新技術はビッグデータを利用するには不可欠な技術の1つであり、ITを活用した医療に与える影響が大きいと考えている。肺は特異性も多く、最もハードルが高いものである。肺を対象に技術を実用化できれば、将来的には、脳や肝臓などの別の臓器、骨などにも応用できる。富士通は電子カルテメーカーであり、画像情報、テキスト情報、心電図データ、生理学的データを統合できるのが強みである」(同氏)
また、「大学院を卒業後、7年間は専門医研修の期間であり、30歳を超えるので、自らの名前で所見を出すことはできない。診断ができる専門医は、全国に8000人程度であり、これらの医師を支援できる」と期待を寄せた。
富士通研究所では、異常陰影などが写った3万個の部分画像を使用して、サポートベクター方式により機械学習をさせており、「今後、画像数や症例数を増やし、実証実験を重ねることで、2018年度を目標に技術を完成させる計画であり、富士通の関連ソリューションへの実装を目指す」(富士通研究所の馬場主任研究員)としている。
広島大学大学院 医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室の粟井和夫教授