海外コメンタリー

ガバナンスで揺れるNode.jsコミュニティー、新フォーク誕生の裏事情 - (page 2)

Zack Whittaker (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2017-09-05 06:30

 理事会は声明で特にTSCに対し、「すべてのコミュニティーメンバーや協力者、リーダーの地位にある人々に対して平等に行動規範を守らせる」よう求めている。その内容については、米ZDNetに話をしてくれた数人の人々も意を同じくしている。

 理事会のもう1人の選出メンバーであるAshley Williams氏は「これは特定の出来事についての話ではない」と述べるとともに、「(行動規範に)違反する陰湿な、長期にわたる一連の行動についてだ」と述べている。

 またWilliams氏はKapke氏と同様に、理事会としての意見ではなく、個人的な意見だと前置きしたうえで、「Rodの行動は非協調的であり、何度も繰り返されており、それに対して謝罪の言葉もない」と語っている。

 「これはリーダーシップにおける組織的な失策であり、Rodはその最も顕著な一例だ」(Williams氏)

 Williams氏は「この状況はまさにTSCが自身の統括に失敗したということだ」と述べている(TSCは自らをも含め、委員会を主導する責任を負っているが、その責任を果たせていないという点を多くの人が指摘している)。

 こういった理由ゆえに、Node.jsコミュニティーは今回の辞任のニュースを平静に受け止めている。

 行動規範に対するコミュニティーの信頼感が、同プロジェクトにおける事実上の人事部門として機能し、参加者やメンバーが敬意を払いつつ貢献できるようになる。つまり行動規範の目的は、アイデアの共有を建設的なかたちで促しながら、ハラスメントや受け入れ難い行動のない作業環境を生み出せるようにし、コミュニティーの成長を助けていくというものだ。

 しかしKapke氏が指摘しているように、その行動規範は言論の自由を抑圧したり、人々の観点や意見に同意できないがゆえにそれを過小評価することを許していない。行動規範は、文化や信念、性別、背景の異なる世界各地からの多様な人たちが一体になってプロジェクトに参加し、公平に扱われることを目的にしたものだ。これこそが世界規模でのコラボレーションを実現するオープンソースプロジェクトの核心的価値なのだ。

 同氏は、「言論の自由を盾に他者の足を引っ張る個人を容認するよりも、多様性を容認にする方が価値は高い」と述べている。

 Node.jsのガバナンスにおける有害な文化は、インクルーシビティ(包括性)の問題につながっていった。

 Williams氏は、コミュニティーに貢献したいと考えている人たちすべてが公平に扱われることを目指すイニシアティブとして、十数名からなるインクルーシビティグループを立ち上げた。しかし同グループは、リーダーシップの「度重なる脱線状態」と、同グループの主張によりコミュニティーの結束力が高まるとした提案を否決された点について非難し、最終的に解散した。

 女性と、ノンバイナリージェンダー(自らを男性、女性のいずれかに限定しない人たち)のすべて、そして数名の男性がグループを離れたことを受け、同グループは2016年8月に解散した。その多くはNode.jsコミュニティー自体から完全に身を引く道を選んだ。

 ウェブ開発者のRudolf Olah氏はブログに、「オープンソースの世界では、ほとんどの開発者は自らの自由時間を使ってボランティアで貢献しているため、コントリビューターを追い払ってしまうのは致命傷となり得る。小さなプロジェクトでもコントリビューターを引き付けるのは大変だ。ましてやNode.jsのような大規模プロジェクトですべてのコントリビューターが気持ちよく作業できるようにするには細心の注意を払う必要がある」と記している。

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