スペインのバルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC)は、新たに運用を開始した「MareNostrum 4」のはるか先を見据えた野心を抱いている。
MareNostrum 4は、近々予定されているクラスタ追加作業が完了した暁には、最高13.7ペタFLOPSという性能を達成する。
提供:Lucia Meler氏/BSC
BSCは、欧州におけるコンピュータの性能をペタスケールからエクサスケール(エクサはペタの1000倍を表す単位)へと引き上げる動きで主導的立場を発揮するという目標を抱いており、新たに運用を開始したMareNostrum 4はそうした動きの1つでしかない。
3400万ユーロ(4000万ドル)もの費用をかけ、最近運用を開始したMareNostrum 4は欧州で3番目に高速なスーパーコンピュータであり、世界の高性能コンピューティングシステムのランキングである「TOP500」の13位につけている。
科学研究を目的として開発されたMareNostrum 4は、11.1ペタFLOPSという処理性能を実現しており、2012年から2013年の間に設置された「MareNostrum 3」と比べると10倍の性能向上を達成している。なお、1ペタFLOPSは毎秒1000兆回の浮動小数点演算を実行できる性能を表している。
このような高い性能を活用することで、MareNostrum 4は気候変動のシミュレーションや重力波の研究のほか、核融合エネルギーの開発、AIDSワクチンの開発、がんと戦うための新たな放射線治療法の研究に関するタスクをより高速に処理できるようになる。
さらに今後数カ月のうちに、汎用クラスタに対して、3つの小規模クラスタを追加するというアップグレード計画が予定されている。この汎用クラスタはラック数が48、ノード数にして3456、プロセッサ数は16万6000と、同スーパーコンピュータのなかで最大かつ最もパワフルな構成要素となっている。
新たなクラスタには米国や日本で開発された新テクノロジが採用される予定だ。これにはIBMの「POWER9」やNVIDIAの「NVIDIA Volta」GPU、Intelの「Knights Hill」プロセッサ、64ビットの「ARMv8」プロセッサが含まれる。こうしたテクノロジは米国の「Summit」や「Sierra」「Theta」「Aurora」、そして日本の次期「京」といったパワフルなスパコンに用いられている。
これらクラスタの追加によって、MareNostrum 4の全体性能は13.7ペタFLOPSに達する予定だ。比較のために述べておくと、東京大学柏キャンパスの最先端共同HPC基盤施設に設置されている「Oakforest-PACS」は13.5ペタFLOPSだ。なお、Oakforest-PACSはTOP500ランキングで7位につけている。
MareNostrum 4はストレージ容量も14ペタバイトに増強される予定だが、処理能力やストレージ容量に対するこのような増強を実施しても、消費電力は30%増の年間1.3MWにとどまる計算となっている。