古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

HPE開発部門におけるDocker導入事例--3つの決意表明へ - (page 3)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2017-09-26 07:15

 社内での開発基盤の導入には、ソフトウェア面だけでなくハードウェア面を含めた多面的な検討が必要です。以上を踏まえ、HPEの開発部門は、以下に示す三項目を課題としてあげました。

  • 運用管理者のメンテナンスの効率化、ハードウェア面でのコスト削減
  • ソフトウェアの配備とビルド時間の改善、ビルド待機時間とテスト時間の短縮
  • ソフトウェア両面でのコスト削減

 1つ目は、IT基盤自体のメンテナンスの高効率化です。規模や社内の開発部門の要件に応じてハードウェアやソフトウェアを継続的に調達するにせよ、IT部門による日々のメンテナンス工数を低減できるIT基盤を選択しなければなりません。

 2つ目は、ソフトウェアのビルド作業に関する効率化です。大勢の開発要員がビルドされたモジュールを効率的に共同利用できなければなりませんし、コンパイル、モジュールの承認、結合テスト、GUIの機能テストなど、ビルドやテストにかかる短縮を実現しなければなりません。

 3つ目は、コスト削減です。最新鋭のハードウェアを新規に導入する場合でも、運用部門の学習コストを圧縮しつつ、ハードウェアの購入費用(HPEの自社の開発基盤で利用する場合であっても、当然購入コストが掛かります)も抑えなければなりませんし、今まで使っていたソフトウェアのライセンス費用の再検討も必要です。

 以上の3つの課題に対して、HPEの開発部門は、以下の3つの決意を表明しました。

  • HPE社内の開発環境として定評のあるブレード型サーバ「HPE BladeSystem」の継続採用
  • ビルド環境、テスト環境などを迅速に実行できるCD/CIツールとDockerコンテナの採用
  • ハイパーバイザ仮想化ソフトウェアのライセンスを排除し、OPEXを削減

図. HPEの開発部門における課題と決意

 このように「開発の時間短縮」と一口にいっても、単にソフトウェアの開発ツールの見直しだけでなく、初期導入費用の削減、ハードウェア性能、メンテナンスの容易さ、学習コスト、仮想化ソフトウェアの見直し、新技術の採用メリットなど、さまざまな検討項目を挙げる必要があります。自分たちが「どうあるべきか」という青写真を描きつつも、人員や予算などを検討しながら、妥当と思われる落とし所を見つけ、最終的に「決意」を示さなければなりません。


図. 新基盤導入における青写真の作成、課題の列挙、決意表明

 HPEの開発部門におけるDocker導入事例紹介の第1回目では、開発の対象物や開発部門のIT基盤における課題、決意した内容、開発基盤導入にあたっての検討項目の例などについて簡単に紹介しました。

 開発部門におけるIT基盤導入プロジェクトであっても、ハードウェアの機種やオープンソースソフトウェアを選択するだけでは、IT基盤の導入の成果は、なかなか得られません。非常に抽象度が高く感じるかもしれませんが、ビジョン、課題意識、決意の表明、プロジェクト計画などは、経営戦略、事業戦略、IT戦略に基づいて策定しなければなりません。

 次回は、HPEの開発部門がどのような検討を行ったのかを具体的にご紹介します。

古賀政純
日本ヒューレットパッカード オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト
兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバのSE及びスーパーコンピュータの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国ヒューレットパッカードからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は、日本ヒューレットパッカードにて、Linux、FreeBSD、Hadoop、Dockerなどのサーバ基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator、Novell Certified Linux Professional、Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack、Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「Mesos実践ガイド」「Docker実践ガイド」「OpenStack 実践ガイド」「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード。

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