NTT東西のIP網移行で懸念される企業間通信への影響 - (page 2)

國谷武史 (編集部)

2017-10-19 07:00

 情報サービス産業協会(JISA)が実施した検証によると、NTT東西が予定する補完策では、データの伝送遅延が現行に比べて1.1~4.0倍程度になることが分かった。10月13日にデータ・アプリケーション主催セミナーで講演した流通システム開発センターの坂本真人氏によれば、現在のEDIで利用されているJCA手順や全銀手順などが、実質的に利用できなくなる可能性があるという。

 「現行の手順や仕組みでも、大手では発注メッセージの受信に1時間程度かかるようなケースが珍しくない。補完策になれば、さらに数倍の時間がかかるようになると予想され、業務に大きな支障が出る恐れがある」(坂本氏)

 同センターは、主に流通システムの標準化や普及に当っているが、EDIではインターネットベースの「流通BMS」の普及を推進する。10月3日現在で公表されている流通BMSを導入済み、導入予定とする企業は、小売業で194社、卸売業・メーカーで227社に上るが、同センターがベンダーなどの協力で推計している卸売業・メーカーでの導入は1万社以上になる。

従来型の手順などによるEDIでは補完策によってサービス品質が変わる可能性が高いとされる''
従来型の手順などによるEDIでは補完策によってサービス品質が変わる可能性が高いとされる(流通システム開発センターの講演スライドより)

 流通BMSの導入によって、従来は取引企業ごとに異なっていった業務プロセスやデータの書式などをある程度にまで標準化できるため、通信費用や経理処理における人件費などを含めたコストダウンが期待されるという。同センターが企業と行った実証では、卸メーカーの売掛金の消し込み処理に要する時間が月平均140時間削減される効果が認められた。

 こうしたEDIの利用は、現状では流通BMSを導入する流通関連企業にとどまるが、金融業界でも2018年12月に稼働を予定する「全銀EDIシステム」から、企業間送金電文を流通BMSと同じXMLベースに移行する。坂本氏によれば、2018年春頃をめどに金融EDIの接続サービスなどを予定するITベンダーなどとの接続確認を開始する予定だという。

 またIP網移行への銀行業界側の対応として、全国銀行業界は4月に銀行間取引向けの全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)を制定している。現状では各業界の大きな枠組みでの取り組みとなるが、将来的は他業種や個社レベルで普及していくとみられる。

 NTT東西では、2016年9月から補完策の検証環境を提供。ユーザーが施設(千葉市美浜区)に機器を持ち込むか、ユーザーが機器を配送してNTT側で検証する。6月には、メーカー製品を含む一部機器の検証結果も公開した。

 ISDNのデジタル通信モードを利用する企業では、まず現在のシステム環境や機器を正しく把握し、上述の検証結果や補完策の可否、影響などを確認する必要がある。同時に、今後のネットワーク環境に即したEDI導入などの検討も始めることが求められそうだ。

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