米GEは、10月に米国サンフランシスコで開催したカンファレンス「Minds+Machines」で、産業分野向けIoT(インダストリアルIoT:IIoT)に関する新たな調査結果を発表した。それによると、企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた期待と実際の取り組みには大きな開きが発生しているという。
調査はITとオペレーション業務に携わる意思決定層を対象に行われたもので、IIoTには将来の成長と競争力確保に向けて大いなる機会があるとしながらも、多くの企業はこの機会からメリットを得るための行動は起こしていなかったという。例えば、回答者の80%は、IIoTが企業や業界に変革をもたらす、あるいは変革する可能性があるとしているほか、「デジタル・インダストリアル・トランスフォーメーションが他社との競争において重要である」との意見もあった。
その一方で、「デジタルトランスフォーメーションがビジネスに深く浸透していると実感している」のは回答者の8%未満しかいない。回答者の10%は「デジタルトランスフォーメーションを進める計画はない」としている。
GEは調査結果に基づき、IIoTへの期待からその導入準備の進行状況まで、デジタルトランスフォーメーションの実際の進捗状況を把握するための独自の「デジタル・インダストリアル・エボリューション・インデックス(進化指数)」を作成し、評価を行った。その結果、合計スコアは100点中63となり、インダストリアルインターネットに対するアウトルック(期待・見込み)が78.3と非常に高かった一方、会社のレディネス(準備性)は55.2だった。この数字の開きはIIoTからメリットを求める企業に対して課題と機会の両方を意味している。
その他の主な結果は以下の通り。
成長・競争において不可欠なデジタルトランスフォーメーション:
デジタル・インダストリアル・トランスフォーメーションが企業の競争力にとって重要であると考えているのは86%で、76%がこの変革の成果として、高品質なサービスが提供できること、と評価した。
IIoTにおいてコネクティビティ(接続性)と産業用アプリケーションが最も重要:
デジタルトランスフォーメーションに必要なテクノロジとして、コネクティビティ(接続性)(63%)と産業用アプリケーション(58%)が挙げられた。
IIoTプラットフォーム、アプリ、アナリティクスが投資における優先順位:
回答者は投資が最も必要なテクノロジ領域として、IIoTプラットフォーム(22%)、産業用アプリケーション(14%)、ビッグデータ分析(14%)を挙げる。
コストが最も重要:
ほとんどの回答者がデジタルトランスフォーメーションの最大の障壁としてコスト(42%)を挙げ、続いてセキュリティシステム(32%)、データプライバシー(32%)を挙げている。
デジタルトランスフォーメーションに必要なのは組織改革:
IT/OT分野の意思決定者の54%が、デジタルトランスフォーメーションを遂げるには組織改革が必要だと考えている。66%は、データアナリストを全ての部門/部署に配置する必要があると回答。61%は、IT部門が企業の中心的な業務機能の一部になる必要がある、と回答している。55%は全従業員がIIoTに対応する準備が整っていることを企業として確認する責任があると回答した。
また、IIoTを既に活用しているGEの顧客事例として、以下の2社が紹介された。
Exelon
Fortune 100のエネルギー会社Exelonは、GEと協業し、米国中の送配電網に「Predix」ベースのソフトウェアソリューションを導入。機械学習に基づくアナリティクス機能を実装することで、1000万人以上の顧客向けの系統の信頼性、可用性、効率性向上が期待される。ExelonはGEと、あらゆる発電機器にPredixソフトウェアスイートを導入するという合意を2016年に行っている。
Qantas Airways
オーストラリア最大の航空会社Qantas AirwaysとGE Aviationは、新しい飛行データアプリ「FlightPulse」を開発。航空機の運航効率を高め、二酸化炭素排出量を削減するための手助けとなるデータをパイロットに提供する。このアプリはPredix上で稼働する初の商用モバイルサービスとなり、記録された航空機データと高性能なアナリティクスを活用して、パイロットが個々の運用効率データと飛行傾向に安全にアクセスできるようにする。この取り組みでQantasは2016年に、3万トン以上の燃料を節約。燃料節約量は倍増している。