「デジタル化はあらゆるものに関係する。自分の役割にどのような影響を与えるかを考えるべきだ」ーーSAPのエグエクティブボードでクラウドビジネスグループを率いるRob Enslin氏は10月、SAP Hybrisがスペイン・バルセロナで開催した「SAP Hybris LIVE:Global Summit 2017」の会場に集まったHybrisユーザーに向けてこう述べた。デジタル化で考えるべきは体験。適切にパーソナライズされた体験を提供できなければ顧客を失うことになると助言した。
SAPのエグエクティブボードでクラウドビジネスグループを率いるRob Enslin氏
SAP HybrisはSAPが2013年に買収したEC技術企業。オムニチャネルコマースの先駆者で、EC(コマース)の他、サービス、マーケティング、セールス、レベニュー(課金)などのソリューションをクラウドとオンプレミスで提供している。
Enslin氏はSAPジャパンの代表取締役社長などを経てグローバルカスタマーオペレーションのトップに。4月には新設のクラウドビジネスグループのプレジデントに任命された。新しいポストの下、SAP Ariba、SAP Fieldglrass、Concur、SAP SuccessFactors、そしてSAP Hybrisを統括する。
Enslin氏はSAP全体の戦略からSAP Hybrisの重要性を説明した。コマース、サービス、マーケティングといったSAP Hybrisの事業領域は顧客体験に直接関わる部分となり、Salesforce.com、Oracle、マーケティングではAdobe、IBM、Marketoなどと競合関係にある。SAP Hybrisの競合優位性は、ERP(統合基幹業務システム)などバックエンドを持つSAPとの統合にある。
「今日のコンシューマーは技術を使いこなす高度なユーザーであり、シームレスで自分向けにカスタマイズされた個人的な体験を求めている。これを提供するにはデジタル化が不可欠で、デジタルコアが必要だ」とEnslin氏。デジタルコアとは、SAPの最新のERPである「S/4 HANA」を土台にビジネストランザクションの処理と洞察が得られる中核技術だ。顧客の体験に影響する要因はさまざまであり、コアを持つことでこれらを総合的に見ることができる。
このデジタルコアを中核に、体験のSAP Hybris、従業員エンゲージのSAP FieldglassとSAP SuccessFactors、支出管理のSAP Ariba、Concur、IoTなどが相互接続するのが「SAP Business Framework」だ。「すべてのLOB(事業部門)、コアの業務に無限に情報が流れ、データという”金鉱”を掘ることで自分たちのビジネスを再考できる」とEnslin氏は説明する。これを容易にするため、SAPは9月にさまざまなソースにあるデータの活用を簡素化する「SAP Data Hub」を発表している。
デジタルコアを中核とするSAPのソリューション体系
Enslin氏は次に、クラウドへのフォーカスと個々のソリューションの関係を強調した。